セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.224『マネージャー』

政治・経済

2008-09-08

 福田首相が辞めてしまった。衆参のねじれ状態の中での困難な政権運営ははじめから分かっていたことだろうから、辞任の理由はやはり、身内である与党内からの圧力だったのか。私は安倍首相と同様、来年1月15日で期限切れとなる新テロ特措法への対応で行き詰まりを感じたことが大きな原因だったのではないかと思う。前回は衆議院における3分の2の再議決によって成立させたが、今回は連立のパートナー、公明党がこれに応じない姿勢を示しており参院自民党もこれに同調する構えとあって、もはやこれまでと観念したのではなかろうか。

 詰まるところ、福田首相にとっては、年金問題や拉致問題よりも、アメリカとの約束を守れるかどうかが一番の大事だったのではないだろうか。ということは、今回の首相交代も、アメリカから見れば『ペルシャ湾SS』のマネージャーが辞めた程度にしか思われていないかもしれない。

 しかし、実際のガソリンスタンドにおいては、マネージャー(店長・所長)は経営の浮沈を握る重要なポジションである。売上金の管理、店舗の清掃、スタッフの訓練、クレーム対応、計画の策定、そしてその遂行─実に大きな責務がマネージャーには課せられているのだ。休日返上、サービス残業当たり前といった過酷な労働環境意の中で、歯を食いしばって働いている人は少なくない。総理大臣と違っておいそれと代わりが務まる人材もいないので、無責任に辞めてしまうわけにも行かない。福田さんの言葉を借りれば「ホント、かわいそうなくらい苦労してるんですよ!」─。

 セルフ化は、そうしたスタンド・マネージャーの荷を軽くするものとなるはずだった。ところが “給油以外はフルサービス”という訳のわからないコンセプトの日本型セルフにおいては、フルサービス以上に煩雑な管理業務と厳しい販売ノルマが課せられている店もあるようだ。コストがかさむ重装備のセルフシステムによる安売り量販は、「500㌔売っても赤字」という現状を生じさせ、それを補うべく油外販売の高い目標を達成しなければやってゆけなくなっている。しかも、少子化・省エネ化・原油高という「三位一体」の減販要因により、来店台数はこのところ減る一方。おまけに景気は下降気味となれば、洗車やスペシャリティなどの売上を伸ばすのはかなりしんどい。販売量が減るのに収益は上げなければならないという、この「ねじれ現象」にあって、スタンド・マネージャーの苦悩は増すばかりである。

 しかし、いずれにしても収益を確保しなければならないわけだから、ここはひとつ、経営者はマネージャーの特性を見きわめ、二種類の方法のいずれかでスタンド経営に取り組ませてはどうだろうか。一つは、あくまで販売量や油外収益を伸ばすことにより利益を上げる「上げ潮」路線。もう一つは、徹底的なコスト削減によって利益を捻出し黒字化を図る「財政再建」路線。つまり、50万円の粗利を上げるのも、50万円の節約をするのも同じ働きとして評価するのである。複数のスタンドを展開する会社であれば競わせるのも良い。そうすれば、マネージャーも明確な方向性を持ち、自分の得意とする方法で利益を追求することができるのではないだろうか。

 問題は、果たして自分の会社のマネージャーがどちらの路線に向いているかということである。いずれにせよ、中途半端が一番良くない。ちょうど、片方のアイランドはフルサービスにし、もう一方はセルフサービスにするように。そういうスタンドを任されたマネージャーはさぞかし大変だろう。さらに言えば、経営者自身もどちらのタイプなのかを自己吟味し、進むべき道を定めなければならない。私たちは苦しくても、経営を放り出すわけには行かない。福田さん、「あなたとは違うんです」。

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