セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.230『一期一会』

GS業界・セルフシステム

2008-10-20

 前週のコラムで柿本石油倒産に関連していろいろと書いたところ、東海地方のスタンド経営者の方からFAXで次のような感想をいただいた。(15日・水)

 『当地区にもプリカを資金繰りのために、仕入値を考えずに販売している業者がいます。10月13日現在、売り値151円で、5万円プリカは1,500円のプレミアム付きのうえ5円引き。1万円プリカ2円引き、2万円プリカ3円引き、3万円プリカ4円引き。広告チラシでは“アナタの給油方法、損していませんか? 現金で給油はモッタイナイ!プリカならおトク、便利、エコ!”と出ています。銀行で5千万円借りるなら、担保やら保証やら大変な事ですが、安売りならすぐに手元におカネが入ってくる。どんどん泥沼に入って行くのも気づかずに…。同業者としては、どうかお客様に迷惑をかけないでくださいと願っています』─。

 前回も指摘したことだが、プリカは代金決済のツールに過ぎず、客から事実上の“借金”をするためのものではない。柿本石油倒産では、灯油の前売り券を30万円も持っている人がいるそうな。売る側も、買う側も、感覚が麻痺してしまっていたとしか思えない。そのうち、10万円プリカ10円引きなんていう馬鹿が出てくるかもしれない…。

 関東地方に本社を置く石油商社の上席管理職の方が訪ねてこられ、ローコスト・セルフについていろいろと意見交換させていただいた。(17日・金) 様々なセルフシステムの中でも、最もラディカルな原則に基づいて設計・運営されるテクナシステムに対する一種の恐怖感のようなものがあり、これを導入した場合の社内のアレルギー反応を危惧しておられた。『しかし、現場のマネージャーたちは過去の成功体験の延長線上でしか物事を考えられない。結局、高コスト体質のまま赤字が続く状況に陥っているのです。20万円油外収益をあげるのも、20万円コストを減らすのも同等の貢献なのだという考え方を根付かせたい。そのためにも、何とかローコスト・セルフに挑戦してみたい』─。

 まさに“敵は内にあり”と言ったところか。大型戦艦の航海長の舵さばきやいかに。もちろん駅での見送りの際、できる限りの協力をさせていただきますと申し出たことは言うまでもない。

 大きな会社の苦労もさることながら、小さな会社の苦労たるや並大抵のものではない。文字通り、生きるか死ぬかの選択を迫られているガソリンスタンド経営者は少なくない。そのような経営者の一人が、西日本の地方都市から訪ねてこられた。(19日・日) 父君が外資系元売の三社店を永年経営してこられたが、跡を引き継いでその財務内容をみて愕然とした。そして、その最大の要因が特約店からの高過ぎる仕入れ価格にあることが判明、改善を求めるもにべなくはねつけられ、やむなく業転玉を購入。今後はPBとなることも視野に入れ、ローコスト・セルフでやってゆきたいとの相談を受けた。『しかし、うちのような田舎のスタンドが本当にやって行けるでしょうか。これまでの掛売りのお客さんはどうしたらよいでしょうか。近隣のスタンドはどのような反応を示すでしょうか』─。

 やるしかないとの意気込みと、失敗したらどうしようという不安とが交錯する。秋の夜長、グラスを傾けながら零細スタンドの経営者同士、語り合った。

 ガソリンスタンド業界と言っても、会社の規模や環境によって問題点はそれぞれ異なる。そこで働く人々の悩みや心配も置かれた立場によって異なる。しかし、最終的にはひとつの点に集約されるようにも感じる。それは、問題の解決策としてのローコスト・セルフシステムに取り組むか否か、ということだ。近隣のスタンドとの戦い、社内の抵抗勢力との戦い、仕入先との戦い、そして自分自身との戦い─戦う人たちとの交流を経て、勇気付けられた一週間であった。

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