セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.231『セルフ改革』

GS業界・セルフシステム

2008-10-27

 先ごろ、西日本の地方都市のガソリンスタンドをセルフ化した。その会社は、すでに2ヶ所のセルフスタンドを運営しており、今回が3店舗目なのだが、前の2軒は販売量が思い通りに伸長せず、経営者は困っていた。しかし、売れない原因がわからなかったわけではない。いや、むしろわかり過ぎるぐらい明らかだった。それは、元売からとてつもなく高い単価でガソリンを仕入れていたため、商圏内の最安値に追随できずにいたのだ。

 ちょうど1年前に社長が名古屋に来られ、3店舗目をテクナシステムによるセルフスタンドに改造するにあたり、会社全体をローコスト体質に作り変えたいとの相談を受けた。私は手始めに、まず安い業転ガソリンを幾らか仕入れてみましょうと提案した。長年、元売のマークを掲げて商売をしていた社長にとって、それは勇気のいることだったに違いない。しかし、社長は業転ガソリンを仕入れ、元売との取引関係を緊張感のあるものへと変化させていった。

 次に、社内で希望退職者を募り人員削減に着手する。ローコスト化に向けて布陣を整える一方で、販売能力のある人材は唯一のフルサービス店舗に集め、戦力アップを図った。そして、3店舗目のセルフスタンドがオープンすると同時に、他の2店舗のセルフと共に、それまで商圏内で一人勝ちを謳歌していた安売り量販店と同値の価格看板を掲出、ガチンコ対決を繰り広げることになった。

 果たして、新しいセルフ店は順調に販売量を伸ばしているばかりか、低迷していた他の2店舗もそれぞれ1.5~2倍の販売量となった。さらに、唯一のフルサービス店に、この会社と取引のある掛売り客が集中し、こちらも増販しているとのことだ。1年間かけて構想した、ローコスト・セルフ店を旗艦とする連合艦隊戦術が、スタートして1ヶ月も経たないうちに目ざましい成果をあげることになった。しかし、ここまでの道のりは決して楽ではなかったはずだ。元売・社員・顧客という三つの関係を見直し、抜本的に改めることは、1社1店舗の会社でも容易なことではない。まして4店舗のスタンドを持つ会社となればなおのことだ。経営者の決断に拍手を送りたい。

 さて、この社長にはもうひとつ取り組まねばならない問題があった。それまでは気弱でおとなしかった「のび太くん」が、突如「ジャイアン」を相手に一歩も引かないファイターに豹変したため、驚愕し、狼狽している周辺スタンドの組合から、連日呼び出されることになったのだ。しかし社長は、「私は違法なことをしているわけではないのだから、逃げも隠れもしません」という姿勢を貫き、組合に毎日のように出向き、相変わらず“共存共栄”を唱える時代遅れの連中の説得や恫喝や哀願に辛抱強く耳を傾けている。

 「社長、決して妥協してはいけませんよ。ここまでやってきたことが台無しになってしまいます。もう少し頑張っていれば、周辺のスタンドはあきらめますよ。いまが正念場です」

「わかっていますよ、和田さん。あなたが言われたように、決して居丈高にならず、何を言われても“迷惑かけてすみません”と答えています。このところ昼ごはんは、組合の事務所でご馳走になっています。これがなかなか豪勢な割り子弁当で…(笑)」

 1年前にはじめて社長にお会いした時には、「ノイローゼになりそうで…」とこぼしておられたが、いまでは自信を取り戻し、経営を楽しんですらおられるようだった。

 のび太くんはドラえもんのポケットから出てくる道具が頼りだが、私はドラえもんではない。テクナシステムを導入すれば、何の努力もせずに経営が改善されるわけではない。成功の鍵は、一にも二にも経営者の取り組みにかかっている。あえて言えば、私の役割は「のび太さ~ん、がんばって~」と声援を送る「しずかちゃん」と言ったところだ。

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