セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.232『がんばれフルサービス!』

GS業界・セルフシステム

2008-11-03

 『この間“セミセルフ”って看板の出ているスタンドへ給油に行ったんですよ。給油はしてくれるけど、窓拭きとかはしてくれないっていうやつ。そうしたら、給油中に従業員のおっさんが、わたしのクルマをじろじろ見て、「いや~それにしてもこの車、ワックスが全然かかってないな~。車が可哀そうだよ。ワックスかけてやらなくちゃいかんよ!」って説教されちゃって、つい「スミマセン」って謝っちゃったんだけど、“なんでわたしが謝んなくちゃいけないのよっ”てムカついて、次からはセルフで入れようって…』─。

 知人の女性がこんな話を聞かせてくれた。従業員は、いかにも車の手入れに無頓着な女性ドライバーに、心安い態度で“助言”をしたつもりなのだろうが、彼女には不快な経験以外の何ものでもなかったようだ。セルフスタンドが増え続ける中で、フルサービスの価値が見直されている。いまこそ、フルサービスの存在感を示すべき時だ─といった論調が、相変わらず幅を利かせているが、実際のところ、となりのセルフスタンドを素通りさせて客を引っ張ってこれるほどの価値あるサービスを提供しているフルサービスのスタンドは、全国的に見ても稀な存在だろう。

 また、セルフでもフルでもないセミセルフという業態は、セルフスタンドより安く売るぐらいの事でもしない限り、単なる“フルサービスの手抜き”であって、ソッポを向かれてしまうだろう。実際、冒頭の女性客が経験したように、セミセルフはその業態ゆえに、従業員の接客態度も横柄な店が多い。セルフ解禁前は、画期的なローコスト・オペレーションとして注目を浴びたセミセルフだが、いまは時代遅れのビジネスモデルの感がある。

 同じスタンドの敷地内にフルサービス・コーナーとセルフサービス・コーナーを設けるというスタイルもあるが、これこそ優柔不断の産物、中途半端の極みである。「二兎を追う者は一兎をも得ず」とはまさにこのことだ。ただし、フリートのスタンドが、主たる客であるトラック運転手へのサービスに専念したいがために、一般客にセルフ給油をさせる仕組みは一つの知恵だとは思う。

 販売価格が同じでも客の大半はフルサービスよりセルフサービスを選択する─というのがかねてからの持論である。だらしない服装、愛想のない挨拶、横着な態度、雑な窓拭き、押し付けがましい声掛けなどに不快感を感じた人は少なくないのではないか。元売各社は、毎年系列店の人材育成に少なからぬ予算を投じているが、効果は限定的・一時的なものにとどまっているようだ。ドラコンの開会式で、「セルフに負けない接客サービスを!」と“激励”しておきながら、一方でセルフスタンドを次々建造するような欺瞞を働く元売にも責任があると思う。

 では、フルサービスのスタンドはもはや存在価値がないのかと問われれば、ノーである。例えば、数店舗のスタンドを展開する会社であれば、セルフ化を進めつつも、最も大きい店やよく売れている店はフルサービス店として残しておくべきだと思う。人材の“選択と集中”により、店長にはその会社でエースと目される人物を起用し、そのもとにドラコン優勝者クラスの接客力や販売力を持ったスタッフを配置し“ドリームチーム”を結成するのだ。ガソリンスタンドは大抵が同族経営であるから、経営者の子息を責任者に据えるのも良い。フルサービスを熟知した者こそがセルフサービスの本質を理解できると私は考えているからだ。

 というわけで私は、セルフ化の伸張と共に、質の低いサービスしか提供できないフルサービス店やセミセルフ店はどんどん駆逐されてゆけば良いと考えているが、一方で、少数ながらも高いサービス力を持ち顧客から支持される強いフルサービス店が“給油以外はフルサービス”などという訳のわからない、出来損ないのセルフスタンドをぶっ潰してくれれば良いとも考えている。それこそが、フルとセルフの真の共存共栄の姿だと思うのである。がんばれフルサービス!

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