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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.233『CHANGE』

社会・国際

2008-11-10

 いまから10年前に『ディープ・インパクト』と『アルマゲドン』という、ストーリーの酷似する2本のハリウッド映画が公開された。数ヵ月後に地球に巨大隕石が衝突する。それを阻止するために宇宙船に乗ってその隕石に核爆弾を打ち込み破壊しようとするのだが─。

 荒唐無稽なお話で、どちらもお世辞にも名作と呼べる類の作品ではないが、あえてこの2本のどちらがよかったかと問われれば、わたしは『ディープ・インパクト』に軍配を上げる。その理由は、合衆国大統領の役を名優モーガン・フリーマンが貫禄たっぷりに演じているからだ。と同時に、当時は黒人の大統領という設定が非常に目新しく感じたのを覚えている。

 その後、人気TVドラマ『24』においても黒人大統領が登場し、近い将来本物の大統領の座に黒人が就く日が来るだろうと思っていたら、やはりと言うべきか、遂にと言うべきか、次期大統領にバラク・オバマ氏が選出された。米国のみならず世界の未来が、史上初の黒人大統領、しかも47歳という若きリーダーに託されたのである。

 合言葉は“CHANGE”変革である。「希望を捨てずに、力を合わせれば、必ず“CHANGE”できる」というオバマ氏のメッセージは、特に目新しいものでも何でもない。問題は、世界経済も地球環境も安全保障も行き詰まりの感がある今日、本当にその言葉どおりのことが出来るのか否かである。

 オバマの演説を聴きながら「よし、オレも“CHANGE”するぞ!」と決意を新たにした経営者は少なくないだろう。翌朝のミーティングでオバマになりきって訓示した社長さんも結構いるんじゃないだろうか。恐らく、来年の各企業の年始の挨拶でも、あっちでチェンジ、こっちでもチェンジの大合唱ではないだろうか。

 ガソリンスタンド業界も、いままさに“CHANGE”が求められている。暫定税率騒動をはさんで石油価格の乱高下を経験し、その間に需要は減少の一途をたどっている。元売の仕切り政策も大きく変換し、変化に対応できない会社─それも地場の有力業者や老舗店舗が、今年もずいぶん倒産や廃業に追い込まれた。セルフサービス、フルサービスを問わず、来年以降いよいよ本格化すると見られる不況こ対応するために、売買の現金化や経営の合理化を一段と進めてゆかねばなるまい。

 日本のある大学教授は、オバマ大統領の米国において、「間もなく黒人は愕然とするのではないか」との暗い予測をしている。オバマが大統領になった以上、自分たちの社会的な地位が低迷する理由として人種差別を挙げるわけにいかなくなり、努力が足りなかったと結論付けられてしまう可能性がある、というのだ。

 この大学教授の説をわたしたちの業界に当てはめてみれば、これまで経営者は、業界の諸問題の多くを元売やその子会社、あるいは一部のPB業者などのせいにしてきた。改革だ、変革だと威勢よく唱えてはみたものの、結局元売におんぶ(販促支援)され、抱っこ(仕切り調整)され、おしっこの世話(赤字補填)までしてもらっていたのだから、本当の“CHANGE”など出来ようはずもなかった。だが、いまや寒風吹きすさぶ道に放り出され、めいめいが自力で歩かされることになったのである。ガソリンスタンド個々の、本当の実力が問われる時代となったのだ。真の“CHANGE”が迫られる時代を迎えているのである。

 私はこれまで、セルフスタンドのコーディネーターという仕事を通じて“CHANGE”を試みようとするスタンド経営者にお会いしてきた。しかし同時に、元売からの圧力、資金調達の壁、先代社長などからの反対、そして何よりもそれらの障害への恐れから、変革をあきらめてしまう現場に幾度も立ち会った。“CHANGE”とは口で言う数千・数万倍も難しいことなのだ。それでも私は、これからもカッコつけてこう言い続けたい。“Yes,You Can”と─。

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