セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.236『過疎地』

GS業界・セルフシステム

2008-12-01

 『安い値の ガソリン探し 遠出する』─これは今年5月に第一生命保険が発表した「第21回サラリーマン川柳コンクール」の入選作のうちの一句。半年前、レギュラーガソリンの価格は天井知らずの勢いで上がり続けていた。8月には180円台に到達し、200円の大台に乗るのも時間の問題と思われていたが、そこから4ヶ月のあいだに60円以上の急降下となった。しかし、ガソリンの値下がりをはるかに凌ぐ景気の後退により、消費者はいまだ、『一回で 満タンためらう 給油かな』の心境に変化がない。一度身に着けた節約術はもはや恒久的なものとなりつつあるようだ。資源エネルギー庁の発表によれば、全国のガソリン販売量は10月も500万キロ割れとなり、十年ぶりの低水準になったという。

 11月30日現在、日進市では元売子会社の値下げ合戦が展開されており、レギュラーガソリンは112~108円となっている。軽油は100円台を割った。私はもともと三半規管が弱く、ジェットコースターなどの乗り物が大の苦手なのだが、弱小PB店の経営者にとって、現在の“価格の絶叫マシン状態”は相当キツイ。もうふらふらである。名古屋市の自宅へ向かう沿道のスタンドは、ようやく120円台を切り始めたところだというのに…。私も一句詠いたくなる。『安い値の ガソリン入れたきゃ 日進へ』─。

 今年一年間のガソリンの乱高下と大幅減販により、今年も相当な数のガソリンスタンドが消滅した模様だ。とりわけ、全石連のまとめによれば、青森、長野、奈良など32都道府県の153の町村が、今後ガソリンスタンドがなくなる恐れがあり、生活必需品であるガソリンや灯油の供給に支障が生じるとのことである。元売や農協は、すでに多過ぎるほどスタンドがある地域にいまさらのように出店して、大安売りの挙句に赤字を垂れ流すぐらいなら、こういう過疎地にスタンドを建てるべきではないか。地域のライフラインを守るという公共性の高い事業であり、同じ赤字を出すにしても意味が違うと思うのだが…。

 とはいっても、やはり過疎化が進む地域でのガソリンスタンドの経営は厳しい。老朽化した設備のスタンドが多く、その修繕費もままならない状態だと聞く。ならばいっそ、消防法を改正して、タンクローリーから直接給油ができる簡易セルフスタンドを造ってみてはどうだろう。山間地のような場所に限り、タンクローリーが指定の場所に停車し、そのタンクからダイレクトに計量機をつなぎ、タンクローリーの運転手が危険物保安監督者として見守る中、地域の人たちがセルフ給油するのだ。地下タンク設備が必要ないうえ、人件費コストも抑えることができる。元売直営だから価格も安くできるはずだ。スタンドが消滅してしまった地域だけでも、規制緩和特区としてこうした方式を導入できないものだろうか。

 公共交通機関が整備されておらず、りっぱな道路や橋ばかりある地方の町村こそ、自動車がなくてはならない地域なのであって、ガソリンスタンドは必要不可欠なインフラなのである。そうした地域の人々には、いかなる手立てをもってしてでもガソリンを安定して供給しなければならず、その責務は行政や元売や農協が負って然るべきではないか。

 再び日進市に目を転ずれば、同市は昨年、千葉県・浦安市に次いで人口増加率が全国第2位の市町村だったという。だからといって、国道のわずか500㍍の距離の中に大型セルフスタンドが3軒も並んでいたり、同じ系列マークの目と鼻の先に元売子会社が新規出店したりと、節度も仁義も何もあったものではない。愛知県有数のセルフ銀座のその半分以上は元売直営店であることから、昨今の値下げ合戦は、さながら元売の面子をかけた代理戦争の様相を呈している。ガソリンスタンドが無くなろうとしている地域がある一方で、日進市のような過当競争を果てしなく続けている地域もある。これも、いわゆる“地域間格差現象”というべきか。

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