セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.237『サファリパーク』

GS業界・セルフシステム

2008-12-08

 ものごとをわかりやすく、かつおもしろく伝えるためには、例えを用いるのが最も効果的な方法である。私もしばしば下手な例えを用いるのだが、先日、あるガソリンスタンド経営者のAさんと雑談していた時、その方がおっしゃった例えがとても面白く、的を射ていたのでご紹介したい。

 『いまのガソリンスタンドは、大きく分けて三種類に分類することができると思うんですよ。動物園とサファリパークと自然界に』─“動物園”というのは、元売の“世話”を受けている特約店や販売店のこと。狭いオリの中に入れられ、自由はまったくないが食い逸れる心配もない。惰眠をむさぼる日々に特に疑問も感じていないようだ。中には芸を演じなければならないこともあるが、上手に演じると表彰状やカップラーメンなんかがもらえたりする。

 『うちはサファリパーク』とA社長。一応元売のマークをあげてはいるが、独自性もある程度保っている。元売からも仕入れるが、業転も買う。セルフシステムなども独自のものを用い、“動物園”に比べるとはるかに野性的な行動を取ることができる。飼育係(元売)も一定の距離を保つよう心がけているようだ。

 特定の系列に属さず、仕入れも売り方もまったくの自由裁量で経営しているPB店は“自然界”に属する。野生動物にとってもっともふさわしい環境のはずだが、同時に厳しい環境でもある。仕入れたガソリンを自己責任で売り切るだけの販売力が必要だ。“動物園”にいるスタンドのように、贅肉をつけていては生き残れない。飼育係もいないので、いくら腹ペコでも自力で生きてゆかねばならない。

 さて、「サファリパーク派」を自称するA社長だが、なぜ一気に“自然界”へ飛び出さないかと問うと、『これからは販売力以上に仕入力が必要な時代になると思います。原油価格の暴落と需要の縮小で元売も統廃合を余儀なくされ、それにともない製油所・油槽所・給油所の合理化も進むでしょう。そうなると、高い、安いの問題じゃあなく、ちゃんと“玉”を仕入れることができるかどうかという状況になってくるかもしれない。やっぱり、元売とのパイプは繋いでおいたほうがいいかもね』という答えが返ってきた。エネオスとジョモの統合が発表されたのはその数日後のことである。何という先見性、何というバランス感覚。やっぱり賢い人の考えることは違うなぁと感心した次第。

 それなら逆に、いっそ“動物園”にいればもっと安全なのではという愚問に、A社長は『自然界で生きるよりはるかに危険』と断言された。『もう動物園は十分なエサを与えるだけの力がなくなっているんですよ。エサをたくさん必要とする大きな動物(特約店)からどんどん痩せこけ、病気になったり、死んだりしている有様です。そうかといって、いきなり彼らが自然界に出て行っても生きてゆけるわけがありません。業転ガソリンを買う資金力がないうえに、価格競争に耐えるだけのコスト競争力もないんですから。これからはさらなる地獄が待っているんじゃないでしょうか』─。

 では “サファリパーク”の住人はどうか。彼らもいずれ、野生に帰るか、おとなしくオリに収まるかの選択を元売から迫られることになるだろう。A社長は、いまさら“動物園”に戻る気はさらさらないとのことで、いまのうちから元売から借りている店舗は返却し、仕入れチャネルも増やして「その日」に備えているとのことだった。何ともたくましい。こうなると、もはや“サファリパーク”じゃなくて“ジュラシックパーク”ですな。

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