セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.242『ワークシェア』

政治・経済

2009-01-19

 未曾有(ちなみに“みぞう”と読みます)の不況下にあって、大企業は派遣社員や期間従業員を解雇するだけでは追いつかず、正社員の人件費削減が焦眉の急となっている。とはいえ、これ以上失業者が巷にあふれると深刻な社会問題へ発展するのは必至。そこで最近浮上してきたのが「ワークシェアリング」の導入だ。従業員の削減をしない代わりに、一人当たりの労働時間、すなわち賃金を減らして対処しようというものだ。

 ワークシェアはこれまでもしばしば検討されてきた雇用形態だが、年功序列的な賃金体系や、時間外労働手当の給与に占める割合が大きいことなどが阻害要因となり、日本ではなじまないとされてきた。労働組合も“雇用と賃上げのどちらを優先させるか”というジレンマの中で二の足を踏んでいるようだ。

 トヨタ自動車を例に挙げれば、来月から3ヶ月間、国内工場の一日あたりの生産台数を前年同時期の半分に減らすという。単純に考えれば、従業員も半分で足りるということだ。それを人員削減をしない代わりに、全員の給料を半分にするなんて…やはり無理がある。ワークシェアで余暇が増え、それにより消費が活性化されるというが、給料が激減しちゃったらそうはならないわけで…やはり無理かな。

 ところで、減販にあえぐガソリンスタンド業界においては、ワークシェア導入は効果的といえるだろうか。私は否定的である。製造ラインにおける単調作業は分担し合えても、接客や販売・作業と多岐に渡るスタンドの仕事は、どこまでいっても個人の技能に依存している。有能なスタッフの勤務時間を減らしてしまえば、それによって収益が低下してしまう。野球やサッカーと同様、有能な選手はフル出場してもらったほうがありがたいに決まっている。

 そもそもローコスト・セルフにおいてはシェアするほどの人員も仕事量もない。何百キロ売ろうと、スタッフはセルフコントローラーの前で監視しているだけだ。人件費という最も扱いの難しいコストを、売上の増減に左右されずに、必要最小限に抑えること─これがローコスト・セルフの主要な利点である。しかも、スタッフの能力や資質にあまり左右されずに運営できる。何せ基本的には店番をしているだけなのだから─。

 それにしても、百年に一度かなんだか知らないが、今回の不況は相当キツイものであることは確かなようだ。売上が半分とか3分の1になってしまうというようなことはないかもしれないが、ガソリンスタンド業界も今後その影響を受けることは必至である。これまで、何度も述べてきたとおり、前年比・計画比・同業他社比で100㌫以上を前提としたスタンド経営は大幅に修正を余儀なくされるだろう。縮小する市場の中で、余剰人員を抱えながら経営を続けてゆくのは、よほどの余裕がない限り難しい。

 このような危機にあっては、各地域においてスタンド業者が採算販売の共同戦線を張り、痛みをシェアすることが肝要だが、どこまでもエゴイズムに支配されているこの業界にあっては望むべくもない。いや、むしろや誰かが常軌を逸した安売りをしても放っておくようなことはせず、すぐさまみんなが同じ価格で売る様は、まさしく別の意味で痛みをシェアしているといえるかもしれない。

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