セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.246『コンビニとコンビになれるか?』

GS業界・セルフシステム

2009-02-23

 「我々の業界は、決して価格競争には参入しません。それをやったらこの業界は滅びてしまいますから」─。かつて、ある大手コンビニチェーンの幹部から直接聞いた言葉だ。いまから10年近く前の話だが、当時から価格戦争に明け暮れていたガソリンスタンド業界の人間には、耳の痛い言葉だった。

 そのコンビニ業界の最大手のセブン-イレブン・ジャパンが、売れ残った商品を値引きした加盟店に対し、フランチャイズ契約打ち切りなどをにおわせるなどして値引きを制限していることが「優位的地位の乱用」に当たるとして、公正取引委員会から調査を受けていたことが20日に報じられた。

 今回問題となったのは、賞味・消費期限切れで売れ残る可能性のある弁当やサンドイッチなどの販売方法。売れ残った場合、原価分の損失は加盟店が負担する仕組みになっており、加盟店側は損失を少なくするため値引きしてでも売りたいのが本音だが、それを許すと値引き合戦となり、冒頭のコンビニ幹部の言葉どおり、コンビニのビジネスモデルが崩壊してしまう恐れがある。事実、今回の公取調査の報道を受け、セブンの株価は急落した。

 一方我が業界では、元売り会社が系列店、とりわけ100㌫出資子会社に採算無視の値引き販売をさせている。噂によれば、某元売は全国の100㌫子会社幹部を召集した会議で、年度末まではガソリンは利益ゼロでもいいから売りまくれ、この期に弱小スタンドをつぶせとはっぱをかけたと言う。本当だとすれば恐ろしい話で、これもまた「優位的地位を乱用」した一種の販売規制と言えるのではあるまいか。

 愛知県・日進市を例に取れば、今月に入って2回の一斉値上げがあった。しかし、どちらも翌日か翌々日から値下げをする店が現われ、4~5日も経つと元の価格に戻っているという結果に終わり、前月中旬からレギュラーガソリンは98~99円で張り付いたままの状態である。弁当と違って賞味期限があるわけでなし、何をそんな無茶をして叩き売るのか。しかもその間、仕入れ価格は小幅ながら、毎週値上がりを続けているというのに。

 そんなガソリンスタンド業界を反面教師としているのかどうかはわからないが、値引き合戦を断固として許さないコンビニ業界の姿勢は、その是非はともかくとして大したものだなぁと感服してしまう。元売も本当に利益を上げたいと思っているなら、セブン-イレブン張りの指導力を系列店に発揮すべきところだが、この業界では公取が入ったと言っても、不当廉売のほうなのだからいやになる。

 それにしても、安く売りたくても売らせてもらえないコンビニと、高く売りたくても売らせてもらえないガソリンスタンドとの組み合わせが“相性が良い”なんて、一体だれが言い出したのだろうか。事実、この両者が一緒になって大成功したという例をあまり聞いたことがない。その原因は、あくまでスタンドを主、コンビニを従としたコンセプトに問題があるように思える。

 現在コンビニ業界は「タスポ特需」で好調だ。自販機を嫌ってたばこを買いに来た客が、たばこと一緒に飲み物や食べ物を買ってゆく、いわゆる“ついで買い”が売上を押し上げているのだそうだ。だとすれば、ガソリンもついでに買っていってもらう商品の一つとしてコンビニが扱えば良いと思う。ガソリンスタンドの敷地の中にコンビニがあるのではなく、コンビニの敷地の中にガソリンスタンドがあるという発想で、30キロタンクを1基埋め、計量機を1台据えて置けばよい。コンビニ店内の自販機でプリカを買いセルフ給油。価格も採算重視で安売りはしない。こうしてコンビニを主、スタンドを従の形に入れ替えてみたらうまく行くような気がする。ちょうど売れない漫才コンビが、ボケとツッコミの役割を入れ替えたらたちまちブレークしたのと同じように─。

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