セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.247『ブランド力』

GS業界・セルフシステム

2009-03-02

 昨年10月に新日石・出光が市場連動型の週決め改定仕切りに移行してからというもの、系列玉と業転玉との間には価格差がほとんどなくなったと言われている。しかし、実際のところは、まだまだ系列玉のほうが割高なのが実情のようだ。中には気の毒なくらいの高値で仕切られている店もある。

 しかし一方では、いまだに元売からマージン保証されている特約店もあるという噂も聞く。真偽のほどはともかく、元売各社の代表選手格の店が軒を並べている日進市の値引き合戦を目の当たりにしていると、もしかしたらまだそういう商慣行が続いているのかもしれないと思えてくる。貧乏人のひがみかもしれないが…。

 さて話を系列玉と業転玉の価格差の話に戻すと、系列玉はベースとなる価格に「ブランド料」を上乗せして系列店に卸すのだそうだ。これが大体2~3円とのことだが、どういう根拠で2~3円なのかという明確な説明はなされていないようだ。特約店によってブランド料が異なるという話もある。

 フリー百科事典「ウィキペディア」によれば、そもそもブランドとは、放牧している家畜に自らの所有物であることを示すために自製の焼印を押すことを意味するbranderという古ノルド語から派生したものであると言われている。「真新しい」という意味の英語brand-newは「焼印を押したばかりの」という形容が原義なのだそうだ。

 “焼印を押された家畜”とは、いまの特約店の姿を如実に表現しているようで笑ってしまう。かつては販売力を背景に元売に事後調整や利益保証を迫った有力特約店も、いまでは“交渉権”という牙を抜かれたうえに、ブランド料なる“焼印”を押され、生殺与奪権をすっかり元売に握られてしまった感がある。

 ところで石油元売のマークにどれだけのブランド力があるのだろうか。再び「ウィキペディア」から引用すると、ブランドの経済的価値として、他社とはまったく同一の機能・性能を持つ商品を販売する場合、他社よりも高い値段を付けても売れるならそれはブランドの信用力に由来する価値ということができる。こうして、他社よりも高くできた値段の差額を超過収益力と言い、その会社の貴重な資産となり得るのだという。

 果たして、元売の中に、他社よりも高い値段を付けても売れるだけの超過収益力を持つ会社があるだろうか。その元売のマークを掲げることができるなら他社より2~3円高く仕入れても十分競争力を持てるという会社があるだろうか。これは特約店だけでなく、元売会社の人たちにも吟味してもらいたい問題である。

 もし元売が本当に自社のブランドに経済的な価値があると認めているなら、販売子会社に他社よりも安い値段で売らせようとはしないはずだ。どの元売も、自らブランドの価値を低めているように思えてならない。あるいは、もし自社のガソリンが他社よりも安いコストで供給できるというのであれば、むしろ「ブランド値引」をすれば、系列店から感謝されるに違いない。

 かく言う私も、8年前にいまのPBスタンドを開業して以来何度か、そしていまでも時々マークを掲げようかと考える時がある。業界の巨大な力に押し潰されてしまうのではないかという不安がそうさせるのだが、しばらくすると我に返ってこう考える。「自分の店の“ブランド”は、いつでもだれでも簡単に安全に給油できるこのセルフシステムなのだ」と。もちろん、このシステムなら他社より高くても売れるというわけではない。しかし、少なくとも他社よりコストを抑えて売ることはできると確信している。その前に、そもそも私のような変人に“ウチのマークを掲げませんか”なんて誘ってくれる酔狂な人はおりませんわ。

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