セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.248『あれから一年経ちました』

オピニオン

2009-03-09

 去年のいまごろと言えば、我々の業界は、ガソリン・軽油の暫定税率が失効するのかしないのかでずいぶんと気を揉んでいた。3月中旬まではまだ、与野党間での合意がなされ暫定税率は延長されるだろうとの観測が濃厚だったように思う。しかし19日に日銀総裁人事が決まらず、史上初の総裁空席の事態となったころから“ひょっとすると”という雰囲気が漂い始め、とうとうガソリン25円、軽油17円の値下げをする日を迎えることになったのだった。

 それからの一年は、激動の一年だったと言える。5月1日には暫定税率が復活、前日までのすさまじい駆け込み需要で“うちの店にもまだこんなにお客さんが来てくれるんだ”と感激し、翌月1日からの恐ろしいほどの静寂に恐怖したことがきのうのように思い出される。(思い出したくないか) 原油価格はその後もガンガン上昇し、8月にはレギュラー価格が180円を突破、この先どうなることやらと思っていたら、9月に米・リーマンブラザーズが破綻して世界規模の経済危機へ。原油価格も真っ逆さまに落っこちていまやレギュラー価格は百数円まで下がった。

 仮にいままた暫定税率を廃止すると、レギュラー価格は80円台、軽油価格は70円台となる。内需拡大が焦眉の急と言うのなら、今度は景気刺激策として暫定税率を向こう一年ぐらい撤廃してみてはどうだろう。内閣府が昨年10月に調査した生活必需品の価格調査で値上がりしていた商品について「最も値下げしてほしい商品」について尋ねたところ、トップは22.6%とダントツで「レギュラーガソリン」だった。ちなみに2位は「灯油」の12.1%で、この両方で3分の1を占めている。

 とにかくこの国はどれだけ自動車が売れるかが景気のすべてと言って良い。しかも、海外での自動車販売が信じられないほどの落ち込みとなっているいま、国内でもっと自動車に乗ってもらう手立てを講じなければならない。ホンダが発売したハイブリッドカー「インサイト」がわずか10日で1万台の受注を数え、当初の月間販売予測の2倍に達したことからもわかるように、自動車に対する国民の潜在的なニーズはまだまだ衰えていない。国内の自動車需要を活性化させるために、思い切った燃料費の軽減を促進させることは有効な施策ではないかと思う。

 そんな施策は地球環境保護に逆行するとお叱りを受けるかもしれないが、次世代エコカーの開発と普及に必要な資金も、自動車産業が儲からないと促進されないのも事実だ。自動車業界が再び利益を上げるようになったら、環境保護目的の税金をがっぽり徴収するというのはどうか。そんな悠長なことをしていたら間に合わないとの論もあろうが、生活に困窮している人にとっては百年後の地球のことよりも、あすの自分の家族の生活の方が断然重要なことなのだ。

 「地球を救え」という言葉にだれも異論を唱えないのであえて言わせてもらえば、そもそも地球は人類ごときに救ってもらわなくても、自己治癒力を働かせて適宜回復してゆくだろう。その際、人類が阻害要因となっているのなら、大洪水を起こすなり、疫病を生じさせるなり、地殻変動を起こすなりして、絶滅させるだけのことなのだ。人間の唱えている環境保護とは、所詮“地球を人間にとってもっと都合の良い場所にしよう”と言っているに過ぎないのではないか。

 暫定税率の話からなんだかとんでもない方向に話が脱線してしまった。でも、実際のところ、今回の経済危機で、世の中はきょうのパンを得ることに精一杯となり、環境に配慮する余裕も、他人を気遣う余裕も薄らいでいるのは確かだ。ただ、セルフスタンドで店番をしている身分としては、この一年を振り返ったり、将来を心配したりする“余裕”だけはある。

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