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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.251『WBC!』

エンタメ・スポーツ

2009-03-30

 『初対面の相手とは、政治と宗教と野球の話はするな』─だれの言葉かは知らないが、セールスマンの心得としてつとに知られた訓戒である。例えば、最近の政治の話題になり公明党の批判をしたら、相手は創価学会の熱心な信者だったという具合だ。また、相手がどこのチームのファンかも知らずに(名古屋人だからといってドラゴンズ・ファンとは限らん)、「いや~、きのう中日が巨人の連勝止めましたね~♪」なんてうっかり言ったがために、まとまりかけた商談がご破算になるということがあるかもしれない。

 とはいえ、今回は野球の話題を取り上げねばなるまい。WBCの“侍JAPAN”の優勝は、暗いニュースばかりの昨今、久々にアドレナリンを沸き立たせる出来事だった。恐らく、新年度のキック・オフでも、「サムライ・ジャパンのように一丸となって」とか、「勝利を信じて粘り強く戦おう」といったベタなスピーチがあちこちの会場で飛び交うことだろう。

 「長距離ヒッターがいなくても堅い守りと機動力で強豪を倒した日本チーム同様、小さなスタンドでもローコスト経営に徹して大型スタンドに立ち向かおう」なんて気の利いたコメントをする人はいないものだろうか。あるいは「野球も石油もメジャーが最強とは限らない」とか「ピッチングも仕入もコントロールが大切です」なんて事をスパッと言ってくれたりしたら面白いのに─。

 WBCの勝利を例に挙げ、気合だ、執念だ、団結だなどという精神論をぶつのは、いささか単純な発想だ。競争力のない高値で仕入れたガソリンを気合で売ることができるのか。執念だけで油外収益をあげることができるのか。キック・オフでシュプレヒコールを挙げれば団結できるのか─いずれも答えはノーである。野球もスタンド経営もそれほど単純ではないのだ。

 今回の日本チーム優勝のポイントは、原監督の勝利優先の非情な采配に尽きる。王前監督の愛弟子であり、唯一の和製大砲でもある松中を代表から落としたこと、決勝ラウンドで藤川に替えてダルビッシュを抑えに起用したこと、肉離れを起こした村田を即刻帰国させたこと、その代わりに呼んだ栗原がダメとわかると名誉挽回の機会も与えず交替させたことなどなど。いずれも、星野監督であればできなかったことだろう。情に流されていては強敵を倒すことはできないのだ。

 元売各社もこれからは、エースや4番と位置づけられていた系列店を優遇するとは限らない。戦いが過酷になればなるほど、非情な指示が系列店に出されることだろう。一方、系列・非系列にかかわらず、ガソリンスタンド経営者は、イチローに見倣い、「心が折れそうになる」のをこらえて、何とかして塁に出る(生き残る)手立てを講じなければならない。

 結びに、親しくしていただいている野球好きのガソリンスタンド経営者の方から示唆に富む次のようなメールをいただいたのでご紹介しよう。

 『WBC決勝戦、9回裏の攻撃、1点差で負けている韓国は塁に出た3番と4番に代走を送りました。延長に入ることなど考えず、サヨナラ勝ちだけを信じて勝負を賭けたのです。同点に追いついた韓国は10回表、イチローを敬遠せずに勝負し、さらに青木を敬遠して城島と勝負しました。

 決勝戦の前日、韓国のニュース番組は「イチローと城島をねじ伏せれば勝てる」と言っていました。彼らは主軸選手と堂々と勝負して優勝することしか考えていなかったのでしょうか。そうであれば、韓国の采配こそ“サムライ”だと感じました。

 石油業界でも、サムライのように系列を信じて戦い、系列に殺されてゆく経営者が少なくありません。もしも、韓国の3番と4番が代走を拒み、ピッチャーがイチローを敬遠していれば勝てる確率は上がっていたはずです。でも選手はベンチの指示に従うしかありません。(私自身は)元売のサインを無視し、特約店のサインも無視し、観客の少ないマイナーリーグのスタンドで必死にプレーしています』─。

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