セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.254『ほのぼのニュース』

オピニオン

2009-04-20

 新聞の一面の見出しにせよ、週刊誌の表紙を飾る記事にせよ、悪いニュースにしたほうが良いニュースよりもよく売れるのだそうだ。実際、人類の歴史そのものが、悪いニュースの連続であることは、だれも否定できないだろう。

 百年に一度といわれる経済危機に見舞われている昨今、悪いニュースはますます声高に報じられている。すでに中世のころから新聞の主なニュースは、津波、地震、海賊など交易に影響を与える異常事態についての情報だったというから、ニュースは昔から暗かったのだ。

 我々ガソリンスタンド業界のニュースも、圧倒的に暗いものが多い。需要の減退、市況の低迷、資金繰りの悪化などなど、読んでいるうちにますます落ち込んでいくような情報ばかりだ。「なんかこう、元気が出るような明るいニュースはないものかねぇ」と、油業報知の方に問うても、申し訳なさそうに「ありませんねぇ、スミマセン」との答え。いやいや、別にあなたのせいじゃないですよ─。

 さはさりながら、下ばかり向いていてもしょうがない。暗いニュースばかり報道しないで、明るいニュースも報道しなければ、世の中ますます悲観的になってしまう。読売新聞中部支社は8年前から毎週日曜日に「幸せの新聞」を発行している。「この新聞に悲しいニュースは一行もありません」と書かれているとおり、楽しく、ほのぼのとしたニュースばかりが掲載されている。どれも、世界情勢には何の影響も及ぼさないニュースばかりだが、それでも、読者を励まし、癒そうとする心意気が感じられる紙面だ。

 油業報知新聞をはじめとする業界プレスも、たまには明るい話題で埋め尽くされた新聞を発行してみてはどうだろうか。例えば、ガソリンスタンドでお客様から「ありがとう」と言われた出来事を、自主投稿の形で全国から拾い集めて掲載したり、防犯や防災に貢献したGSスタッフの活躍や、難病や障害にも負けずに働いているGSスタッフを紹介した記事などは、重苦しい空気が漂っているこの業界にあって、一服の清涼剤となるのではないか。

 気をつけてもらいたいのは、売上や収益とは直接関係のない話題を取り上げること。“ナントカシステムを導入して、油外収益○○万円を達成!”なんて記事は、「へぇ~」と思うだけで心温まるものではない。よくある元売主催の□□コンテストの優秀SSの表彰式の記事もつまらない。また、○□石油の社長のコレクション自慢なんて記事もばかばかしいだけ。癒しというのは、数量や金額や物質的なものからもたらされるのではなく、精神的な事柄だからだ。

 とか何とか書いている当のお前からまず明るい話題を提供しろと言われそうなので、最近見聞きした心温まる出来事はないものかと思い起こしてみたが、なかなか無いんだな、これが。何せ世の中不景気だから、客が来店しても、ほとんどが千円分か二千円分をそそくさと給油してさっさと出て行ってしまう。客の表情も心なしか硬い。おまけに私の店は、できるだけ客と接触しないよう心がけているので、感動的なドラマが生まれるはずもない。まあ、その代わり、これといったトラブルも起きず、単調な日々が流れている。

 そんな私の店だが、つい最近、父親と息子が券売室でこんな会話をしていた。「じゃあ、きょうは俺がガソリン券(プリカ)を買ってやるから、ほら」「うん、サンキュー」「運転、気をつけなきゃいかんぞ」「わかってるよ」「これからはひとりなんだから、責任感持って生活しろよ」「わかってるって」─どうやら、息子は近くの大学に入学し、一人暮らしを始めるようだ。何気ない会話だが、息子を慮る父親の気持ちが伝わってきて、何だか微笑ましかった。

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