セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.256『新型インフルエンザ』

社会・国際

2009-05-11

 ガソリンが売れるとか、売れないとか騒いでいる場合じゃない。新型インフルエンザが世界中に広がっている。メキシコにおいて豚型インフルエンザが人に感染したのが原因のようだが、いまのところ弱毒性ウイルスのため、死者は五十数名にとどまっている。しかし、油断は禁物だ。1918年から19年にかけて、推計3千万人とも5千万人とも言われるおびただしい死者(当時の世界人口は約18億人)を出した“スペインかぜ”も、当初は弱毒性だったが、ヒト・ヒト感染を繰り返して行くうちに強毒性へと変異していったのだと言う。

 当時は第一次世界大戦のさなかで、各国の軍隊が世界各地へ移動したため、世界的感染を引き起こしたのだが、その“スペインかぜ”のお陰で戦争終結が早まったとも言われている。いずれにせよ、今度この手の疫病が広まったら、想像を絶するおびただしい死者が生じることは間違いなさそうだ。しかも、その黒い影はいま世界中をひたひたと覆いつつあるように思えてならない。そのような時に、来年のいまごろ石油業界がどうなっているか気を揉んでいる自分がたいそう愚かに思える。いわんや5年後10年後のことなど─。

 「不吉な予想なんかしてねぇで、ちいたぁ明るい話でもしたらどうなんだい」と叱られそうだが(だれに?)、不謹慎を承知で書けば、インフルエンザ渦にあって、人々が公共交通機関を利用するのをためらい、各々自家用車で移動するようになれば、我々の業界にとっては少しばかり喜ばしいことといえる。そのうえ、客はますますセルフスタンドへ流れるのではないかと予想する。

 考えてもみよ、いきなりドアを開けられ、鼻先で「いらっしゃいませー、満タンですかぁ?」なんて声をかけられた拍子に飛沫感染なぞしようものならたまったものではない。あるいは、セールスルームに入ってきた客に呼びつけられ、「ちょっと空気圧みてもらえる?ゴホゴホ…」とやられたらコワイ。「人を見たらウイルスと思え」状態となった世の中では“心の通う接客”なんて、したくも、してもらいたくもない。客と従業員との接触を最低限に抑えているセルフシステムのほうが安心・安全だとは言い過ぎか。

 一方、セルフスタンドでは客がノズルを握って給油しなければならない。自分の前にどんな人間がノズルを握ったかわからない。インフルエンザは皮膚感染はしないと知っていても、やはり気分の良いものではないだろう。コストはかさむが、捨てゴム手袋や、速乾性のアルコール消毒液を置いておくと喜ばれるかもしれない。とにかく、これまで以上に計量機や周辺機器は清潔な状態にしておくことが求められるだろう。

 しかし、そんな心配をする前に、金融危機に端を発した経済的な疫病によって、重篤な状態に陥ってしまっているガソリンスタンドが増えているのも事実である。かつてはその地域にあって一、二を競う規模を誇った会社が、資金繰りに窮してあすにもバンザイするのではないかというウワサを、昨今よく聞くようになった。事後調整というワクチンの支給をやめ、代金回収を早める元売に、多くの系列スタンドが急速に体力を消耗させている。採算販売をしたくても、この期に“口減らし”を加速させんとばかりに、元売が子会社を使って安売りウイルスを撒き散らしているので、かなわない。

 相変わらず「安売り店に追従せず、顧客に納得してもらえるサービスを提供してもうかる店作りを」という方もおられるが、景気が持ち直しても当分“七割経済”が続くといわれている状況では、安売りインフルエンザの感染を逃れるのはなかなか難しい。かくなるうえは、感染しても重篤にならないような体質にするしかない。高熱や吐き気や咳に苦しんだとしても、とにかく災禍が過ぎ去るまで生き長らえることができるよう、抵抗力や免疫力を養っておくことが必要だ。ガソリンスタンドにおいてそれが何を意味するかは、もはや言うまでもないことだろう。

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