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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.260『ハゲタカ・ザ・ムービー』

エンタメ・スポーツ

2009-06-08

 「誰かが言った。人生の悲劇は二つしかない。一つはカネのない悲劇。そしてもう一つはカネのある悲劇。世の中はカネだ。カネが悲劇を生む」─。

 2007年2月から3月にかけてNHK「土曜ドラマ」で放映され、数々の賞を獲得した傑作ドラマ『ハゲタカ』(全6話)が映画化され、今月6日から公開されている。バブル崩壊後の日本で、経営危機に陥った企業を次々に買収していった伝説のファンドマネージャー・鷲津政彦。いまは海外生活を送る彼のもとに、かつて熾烈な戦いを繰り広げ、後に盟友となった企業再生のプロ・芝野健夫が訪ねてくる。芝野は大手自動車メーカー「アカマ自動車」を、中国系巨大ファンドによる買収危機から救ってほしいと頼みに来たのだ。

 日本を代表する名門企業「アカマ」を乗っ取ろうとしているのは、かつて鷲津の部下だった“赤いハゲタカ”こと劉一華(リュウ・イーファ)。彼が率いる投資ファンド「ブルーウォール」と鷲津ファンドとの熾烈な戦いが繰り広げられる。

 ドラマ『ハゲタカ』の世界に魅了された私は、映画版の制作決定を知ってから公開日をずっと待ちわびていた。映画好きのくせに、めったに映画館へは行かない私が、今週のコラムを書くのもあとまわしにして劇場に駆けつけたのには、単にハゲタカ・フリークであるだけでなく別の理由もあったのだが、それはあとで述べる。

 さて、鑑賞後の感想は、ストーリー展開にやや強引なところがあるうえに、情緒的な結末となったことへの不満も残るが、予想以上の面白さで75点。派遣切りやサブプライム問題、リーマン・ショックといった“旬”の問題も盛り込まれ、緊迫したドラマが進行してゆく。ドラマを観ていない人には少々わかりづらい会話もあるかもしれないが、そんな“素人の”観客に気兼ねをした脚本だったら、スピーディなテンポが損なわれてしまっただろう。一方、私のようにドラマを何度も観た人間にとっては、思わずニヤリとしてしまう場面が幾つもあったりする。映画『ハゲタカ』は、それなりに“予習”をしたうえで観るべき作品なのだ

 中国政府の国家予算を資金源とする「ブルーウォール」の採算度外視の買付価格に、ホワイトナイトとして立ち向かった鷲津は窮地に追い込まれる。動揺する「アカマ」の社長・古谷は、柴野の忠告を退け、「ブルーウォール」との業務提携に傾く。しかしその頃鷲津は、だれも考えつかなかった大逆転のシナリオを練っていたのだった─。

 これから映画をご覧になる方々のために、これ以上のストーリー紹介は控えるが、愛知県・日進市の片隅で小さなセルフスタンドを経営している私にはあまりにもスケールの大きな話ではある。しかし、永年この業界に身を置いていると、嫌がおうにも「外資」というものの功罪を考えずにはいられない。事実、セルフも、先払いも、自動配送も、週決め仕切りも、すべて外資系元売が先陣を切って導入したものであり、その後、業界のスタンダードとなった。その合理的な経営思想は、今日の私の原点でもある。しかし一方で、系列店の経営者や従業員が血の通う人間である事を忘れたかのような冷徹な政策は、今日の業界に殺伐性をもたらした。『ハゲタカ』の世界に妙に親近感を覚えるのは、こうしたことを実際に観察してきたからかもしれない。

 それはともかく、私がこの映画にひとしお思いを抱くのは、私も“出演”しているからだ。この映画は、撮影当初からホームページでエキストラを一般公募していた。好きが高じて私も応募したところ、あっさり参加依頼があり、東京のホテルで行なわれた記者会見のシーンの撮影に、新聞記者の1人として出演したのである。果たして、玉山鉄二扮する劉をもみくちゃになりながら追いかける私の“勇姿”が(2秒くらいだが)、バッチリ映っているではないか ! かくして『ハゲタカ』は、私の映画デビュー作品となったのであった。

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