セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.262『デナロ』

GS業界・セルフシステム

2009-06-22

 『株式会社デナロ(東京都千代田区外神田2-2-18、資本金・9875万円、代表者・豊岡芳隆氏)は、6月11日までに事業を停止し、法的申請の準備に入った。当社は、昭和61年11月に設立され、ガソリンスタンド向けの釣り銭機やセルフ式給油所精算システム、大気汚染防止装置などの販売のほか、ガソリンスタンドの運営も行ない、平成16年10月期には年商約21億7000万円を計上していた。しかし、その後は業界環境の悪化などから売り上げの減少に歯止めがかからず、近時は年商10億円を割り込み、また、有利子負債も負担となり資金繰りが悪化、資金調達も限界に達し今回の事態となった。負債総額は約15億円』─6月15日付「静岡商工データ・倒産情報」。

 デナロ社は、リライトカード方式によるセルフ給油システムのパイオニアであり、400ヶ所以上のセルフスタンドでそのシステムが採用されている。私自身は、このコラムの中で、このリライトカードシステムについて、否定的な見解をたびたび書いてきた。つまり、釣り銭の代わりに残高が記録されたカードを発券するというのは、喫茶店で250円のコーヒー代を払うために5千円札を出したら、お釣りの4,750円分がコーヒーチケットで返されたのに等しく、利用客の多くには納得できない方式だと訴えてきたのである。

 また、この点で客とのトラブルを防ぐために両替機を設置したり、アテンダーを常駐させるなら、本来目ざすべき省力化に逆行することになる。つぶれてしまった会社の製品のことをとやかく論じるのはどうかという批判もあろうが、私はローコスト・セルフの提唱者の一人として、この点はいま一度明確にしておきたい。

 一方、リライトカードはポイント・サービスという機能が付加されている。デナロ社は「ポイントプランナー」という関連会社で、個々のセルフスタンドのポイントが他のスタンドや、ショッピング、エンタメなどにも利用できるよう交換するというシステムを立ち上げ、現在も運営している。もし、デナロ社の精算機の導入店が増えてゆけば、このシステムのネットワークは広がり、導入店の集客・固定化に大きく貢献していったことだろう。

 しかし、今後喫緊の課題は、デナロシステムの導入店に対するメンテナンス体制を維持してゆくことであろう。メーカーがつぶれても、ユーザーは経営を続けてゆかねばならない。スポンサーとなる企業が現われ、この分野で引き続き業務を行なうか、さもなくば、導入店が共同で保守・管理組織を作り運営する必要がある。また、今後システムのバージョンアップを図れるよう開発スタッフを確保することも肝要だ。

 部外者がそんな余計な心配をするなと言われるかもしれないが、私としては、ローコスト・セルフにおける考え方こそ違えども、元売のネットワークから独立したセルフシステムを広げてゆくという意味においては、デナロ社の倒産は対岸の火事で済ますわけには行かず、非常に残念な出来事と言わざるを得ない。元売の御用メーカーたちがほくそえんでいるかと思うと、何とも切ない。もはや、セルフと言えども減販を食い止められなくなってきており、それゆえに、ローコスト化への取り組みがこれまで以上に重要視されているいまこそ、我々“独立系セルフシステム”の出番だと思うのだが、一段と悪化している経済情勢の中にあっては、新たな設備投資には慎重なガソリンスタンドが多く、切歯扼腕の日々を送っているきょうこの頃である。

 とにかく、風車に立ち向かってゆくドン・キホーテと呼ばれようとも、私は、元売主導で築き上げられてきた日本のセルフの高コスト体質に対して引き続き問題提起してゆくと共に、ローコスト・セルフシステムの導入を訴え続けてゆきたい。デナロ社の倒産というニュースに接し、その思いをいっそう強くした次第である。

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