セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.266『政権交代・経営統合』

政治・経済

2009-07-20

 「土日高速道路千円乗り放題」でETC車載器の需要が高まっているが、カーショップなどの店頭では相変わらず品切れ状態が続いていると言う。というのも、今度の総選挙で民主党が政権を獲った場合、マニフェストで高速道路全線無料化を謳っており、そうなればETCなど無用になってしまう可能性があるので、メーカー各社が増産に踏み切らないためなのだとか。“政権交代”という言葉をマジで考えるようになってきた兆候の一つと言えそうだ。

 自動車にかかわる民主党のもう一つの政権公約は、ガソリンの暫定税率の廃止だ。これはすでに昨年4月に予行演習済みだ。わずか1ヶ月間の“暫定減税”だったため、4月30日は全国のガソリンスタンドに駆け込み給油客が殺到、翌5月1日は、これまた全国規模で開店休業状態に陥るという、まさに“天国と地獄”を経験することとなった。在庫管理や資金繰りで冷汗・脂汗を流した記憶がよみがえる。

 とうとう麻生首相は解散・総選挙を決断し、来月30日にその帰趨が決することとなった。政権獲得が現実味を帯びてきた民主党では、この暫定税率廃止を当初の「即時実施」から、「恒常的な財源を確立した上で、政権獲得2年目から実施」とトーンダウンする向きもあるようなのだが、果たしてどうなるのか。一年前のいまごろは原油価格がものすごい勢いで上がっていたため、暫定税率復活後ほどなくしてガソリン価格は170円台となった。仮にいま暫定税率が廃止されれば、日進市のレギュラーガソリンは95~8円、軽油は80円前後となる。そのうえ、高速道路がタダとくれば、ガソリンの消費量のみならず、油外商品の販売も伸びるのは確実。今度の総選挙はGS業界にとっても大きな意味を持つものとなりそうだ。

 先週の経済面での大きな動きといえば、キリンとサントリーの経営統合が報じられたことだろう。仮に実現すれば、ビールの国内シェアは5割、清涼飲料では3割超と圧倒的なシェアを持つようになる。ひと昔前なら、市場の寡占化を懸念する声が上がるところだが、国際的な競争力が問われている現代の企業は、国内のシェアだけにとらわれていては存続できないという見方が支配的だ。価格決定権をメーカーが握るのではとの見方に対しても、もしそうなったとしたら売れなくなるだけ、と小売業界は冷静に捉えている。それよりもむしろ、世間の関心は三菱グループの主要企業で保守的な社風のキリンと、非上場の同族会社で自由な社風のサントリーとが、本当に一緒にやっていけるのかという事に向いているようだ。

 これまでしのぎを削ってきたライバル同士が、ある日を境に一緒に仲良くやって行きましょうと言われても、第一線の営業マンたちはすんなりとは受け入れにくいのではないだろうか。石油業界でも、今秋、エネオスとジョモが経営統合し、新会社はガソリンの国内シェアの3分の1を占める。同じ地域で角突き合わせてきた両社の特約店・販売店による“共食い”が今秋以降、全国各所で繰り広げられることになろう。元売からすれば、勝ち残った方が“我が子”ということなのだろう。

 私が興味を抱くのは、全国に1,000ヶ所を越える店舗を抱える「エネオス・フロンティア」と、同じく500ヶ所近い店舗を有する「ジョモ・ネット」というそれぞれの100㌫子会社が統合されることだ。常識的に考えれば、両社の店舗が重複する地域などでの統廃合をすすめ、合理化をはかってゆくことになるのだろうが、そこは相変わらず「国内」でのシェア争いにこだわっている石油元売のこと、ますます販社を肥大化させ、相対的に自社の特約店を一軒、また一軒と押し潰してゆくということをやりかねない。2013年には、国内のガソリン需要はピーク時より3割減少するとされているが、そのころまでに相当数の特約店・販売店が淘汰され、何社かの元売も消滅していることだろう。系列店・PB店にかかわらず、ますます厳しい環境となることだけは間違いなさそうだ。何せビールと違って、ガソリンにはコクの違いも、キレの違いもない。あるのは価格差だけなのだから。

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