セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.275『本気度』

GS業界・セルフシステム

2009-09-21

 今月16日に発足した鳩山内閣、早速18日の閣議で、今年度の補正予算の一部執行停止を決定し、すべての事業を精査し、無駄と思われる予算を削るとしている。厚生労働大臣に就任した長妻昭氏は、毎日新聞のインタビューに答えて、「官僚のみなさんに“無駄遣い”と言うと思考停止する感じだが、「優先順位の低い仕事はどれか」を示せる人の評価が上がるようにしたい。必要性が低い天下り団体をなくしたり、現在運営されている制度の問題点を是正した人の評価が上がるような仕組みを作りたい」と述べている。

 上が変われば、下も変わる。自民党政権のときは、民主党のマニフェストに否定的な見解を示していた官僚たちも、いまとなっては従わざるを得ない。だが、本来役人というものはそういう立場の人たちなのだから、変節を卑屈だなどととがめるべきではない。むしろ、子ども手当てや暫定税率廃止などによって生じる今年度7兆円の財源の捻出が本当に実現できたなら、日本の官僚の状況対応力がいかに優れているかを実証することになるんじゃないだろうか。

 会社とて同じことだ。経営者が自ら打ち出した方針を、どこまで本気でやろうとしているかを従業員たちは感じ取る。例えば、ガソリンスタンドをセルフ化するにしても、ただハードウェアを改造しただけで、相変わらず高いガソリンを仕入れていたり、わがままな客の要求に答え続けていたり、遊んでいる従業員を解雇しなかったりしていれば、「結局、うちの社長は何も変える気はないんだな」と悟られてしまう。

 「従業員が30人いたとすると、経営者は二つの目で30人の人間を見ているが、あっちは60個の目ん玉でひとりの人間をいつも見ているんだぜ」とは、むかし、取引先のある経営者から聴かされた言葉だが、上に立つ人間というのは本当に大変な立場なのだなと考えさせられた。とりわけ、長年続けてきた方法や制度を変えようとする時、リーダーシップをとるべき経営者には、多大なエネルギーが必要なのだ。

 わたしがこれまで仕事を通じてお会いしたGS経営者の中には、セルフ化を契機に、それまでの経営方針を一気にがらりと変えてしまった方もおられれば、時間をかけながら粘り強く変えてこられた方もいる。従業員に「黙って言うとおりにやれ!」と号令する“信長型”もいれば、社内のコンセンサスを得るためにじっくり話し合う“家康型”もいる。しかし、手法の違いこそあれ、共通しているのは、経営者のローコスト経営にかける熱意だ。

 一方、セルフ化したものの、なかなかシステムに伴なった経営転換を果たせぬまま終わってしまった経営者もいる。ある経営者は、同じ路線に大型セルフ店ができるということで、セルフ改造に踏み切った。しかし、営業時間も変えず、仕入先も変えず、人員削減もしないまま、わずか2年ほどで廃業してしまった。最近、その店をセルフ化するきっかけとなった大型セルフ店も、オープンして5年も経たずに閉鎖された。“もっとがんばっていればいまごろは…”との思いに駆られたのは言うまでもない。

 また、別のGS経営者は、道路を挟んで二つのスタンドを所有しているのだが、従来の客への過度の配慮から、新しくて大きい店をセルフ化することをためらい、古くて小さい店の方をセルフ化した。わたしがどれほど反対したかは想像に難くないだろう。結局、予想通り、販売量も伸びず、人件費も減らず、ただセルフ機器のリース料だけが増えるという最悪のパターンにはまったまま、現在に至っている。一年ほど前から跡取り息子が店を切り盛りするようになり、彼はセルフを主とした経営に切り替えたいとの願いを持っているが、オヤジという“抵抗勢力”が立ちはだかっており、実現は容易ではない。

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