セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.276『競争?協調?』

社会・国際

2009-09-28

 9月22日、国連総本部で開催された気候変動サミットにおいて、鳩山首相は、改めて2020年までに温室効果ガスを1990年比25㌫削減することを宣言した。これで、民主党の掲げた政権公約が、日本の国際公約となったわけだ。かくして、日本の首相の演説に対して盛大な拍手が送られるという、国際会議ではきわめて珍しい光景が繰り広げられたのである。このニュースに接して私が思い出したのは、以前このコラムでも紹介したタイタニック号のブラック・ジョークだ。

 タイタニック号には乗客全員が乗れるだけの救命ボートが積まれていなかった。それで、遭難した時、女子供を優先させ、男の乗客には凍てつく大西洋に飛び込んでもらうことになった。まず、アメリカ人の男性には、「飛び込めばあなたはヒーローになれますよ」と説得すると、彼は「オーケー!」と言って飛び込んだ。イギリス人には、「紳士ならば飛び込むべきです」と諭すと、「イエス」と応じて海へ。ドイツ人には、「規則ですからお願いします」と頼むと、「ヤヴォール」と答えてドボーン!さて、お次の乗客は日本人。彼には次のように説得したら飛び込んでもらえたそうだ。「皆さんそうしておられますよ」─。

 とかく日本人は画一的で、集団性や協調性を好む国民性だということは、国際社会でつとに知られていたが、その日本人の首相が、きわめて野心的な数値目標に率先して取り組むという“一番風呂”に飛び込んだのだから、諸外国はずいぶんと驚いたに違いない。いや、もっと驚いているのは、日本の産業界だ。彼らが恐れるのは、生産活動に制約が生じ、それによって中国やインドなどの新興国との競争に勝てなくなってしまうということのようだ。その辺の心配にも配慮して、鳩山首相も「25㌫削減」には、すべての主要排出国が参加することが前提条件だとしている。もし、諸外国が“日本だけ勝手にやればいいじゃないか”という態度を取れば、これはもう、日本一国の問題ではなくて、地球規模の問題になってゆくだろう。各々の国や企業が“国益”だの“国際競争力”だのと御託を並べているいまも、南極の氷はどんどん融けていっているのだ。

 この一連の論議は、どこか我々の業界で繰り広げられていることと似ている。ここ日進市では、年に何度も“市況是正”と称する値上げが行なわれるが、そんな事をしなければならないそもそもの原因は、仕入れ価格が下がってもいないのに、無茶な値下げ合戦をやるからだ。しばらくノーガードの殴り合いを続けたあと、“この辺で休戦して来週から値上げしましょう”なんてことを年中繰り返している。しかもその値上げも、「○○石油も一緒にあげなければいやだ」とか「先に値下げしたのは□□石油の方なんだから、向こうがまず値上げしろ」なんてことを言い合って、なかなか足並みが揃わない。揃ったら揃ったで、今度はすぐに会員価格などで抜け駆け値引きをやり、それが発端となってまた元の木阿弥。だれもが、“10円以上のマージンが取れれば楽なのになぁ”と考えているのに、いつまで経っても市況が安定することはない。本来、イニシアティブをとるべき“主要国”である元売販社が、真っ先にルール破りをしているのだから、疑心暗鬼になるなという方が無理な話だ。

 しかし、いつまでもこんな事を続けていると、最後には「そしてだれもいなくなった」ということになりはしないだろうか。何せ「25㌫削減」の公約を実現するためには、温室効果ガスを年間約4,000万㌧削減する必要があり、これは「国内の製油所から出る二酸化炭素をゼロにしないと達成できないぐらい大変なこと」(石油連盟・天坊昭彦会長)なのだ。そうなれば、日本の産業構造は大きく変換せざるを得ないし、GS業界にも激変が生じるのは必至だ。いつまでも、大型セルフでガソリンを安売りしている場合ではない。年々販売量が減少してゆくガソリンを、いかにコストをかけず、なおかつ適正価格で売るかを真剣に考えなければいけない時期が来ているのだ。

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