セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.278『体育の日』

GS業界・セルフシステム

2009-10-12

 2016年に東京で二度目のオリンピックを開催しようとのもくろみは、今月2日(日本時間3日未明)に開催されたIOC(国際オリンピック委員会)総会であっさりと潰えた。もともと下馬評でも、東京が選ばれる可能性は低いとされていたので“ああ、やっぱりな”という感じだった。むしろ一回目の投票で落選しなかったのが意外な感じだった。

 東京でオリンピックが開催されたのは、いまから45年前の1964年のこと。第二次世界大戦の荒廃から19年を経て復興を遂げ、日本が再び主要先進国として国際社会に復帰したことを知らしめる国家的イベントだった。そのオリンピックの開会式は、10月10日。夏季オリンピック開催日としては異例の遅さとなったのは、この日が東京地方の天気が晴れとなる確率の高い日だったからだという。オリンピックの二年後から、この日は「体育の日」として国民の休日となり、2000年からは「ハッピーマンデー制度」によって、10月の第二月曜日となっている。

 果たして、今年の「体育の日」も全国的に快晴。秋の陽気に誘われて遠出する人も少なくないだろうから、全国のガソリンスタンドもそれなりに賑わいを見せているのではないだろうか。この三連休に照準を合わせて、オープニング・イベントや集客キャンペーンを展開するGSも少なくないだろう。“三連休だというのに、来店客が少ないなぁ”と感じたら、半径5キロ圏内のスタンドまわってみると良い。この時期、大抵どこかの店がイベントの類をやっているはずだ。

 しかし、何百万円という販促費を投じての集客イベントも、その効力はほんの一時のことだ。景品目当てにやってきた客は、結局“祭り”が終わると潮が引くように姿を消してしまう。所詮、現金客とは、その名のとおり現金なものなのだ。だが、私はそういう客を、どこぞのスタンド経営者のように「質の悪い客」と見下す気持ちはない。どこで買っても同じものなら、少しでも安い店やお得な店に行こうとするのは、当たり前のことであり、むしろ、賢い行為といえる。

 天気が快晴とくれば、多くのGSが企画するのは「洗車キャンペーン」と相場が決まっている。この三連休で、10月の洗車売上の半分近くを稼ぎ出そうとの皮算用をしている店も少なくないだろう。セルフスタンドでも、ドライブスルー洗車機の入り口にスタッフが立ち、「本日、洗車カードが半額でおトクですよ、いかがですか?」と声かけしてくる。しかし、洗車カードの大量割引販売はあとあと大きなツケを残すことになる。ちょうど、オリンピックを開催した都市が、その後巨額の財政赤字で苦しむように…。

 オリンピックのルーツとなった古代ギリシャのオリュンピア大祭(紀元前9世紀から紀元4世紀)では、主に徒競走や円盤投げなどの陸上競技などが競われた。女人禁制で、競技者は全裸で競技に臨んだそうである。現在のオリンピックのように、ボディスーツやシューズの機能によって勝敗が決することはなく、ドーピン検査で失格することもなかった。一番早く走った者、遠くへ飛ばした者、高く跳んだ者に栄誉が与えられた。

 本来、競争というものはそうしたシンプルなものであり、特に我々の業界では、安く仕入れ、コストを抑えて売るということに尽きる。高いガソリンを給油し、油外商品を言われるままに購入するお人よし客を「優良顧客」と呼んで囲い込んでもたかが知れている。イベントやキャンペーンという薬物を使用して、一時的に好成績をあげても長続きはしない。むしろ、体がぼろぼろになってしまう。我々の競争は、オリンピックのように栄光で彩られているものでも、運動会のように無邪気なものでもない。数字がすべての世界だが、ゴールもメダルもない。ただ、いつまでも走り続けること。競技から脱落しないこと。生き残ること─それだけだ。

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