セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.280『保安講習』

GS業界・セルフシステム

2009-10-26

 先日、危険物取扱者(乙種4類)の保安講習に出席してきた。3年に1度の免状の書き換えである。県の多目的ホールの会議室に150人ほどの受講者が集まっていた。最初の30分は、危険物安全対策の教育ビデオが上映され、その後、消防署職員による講習が2時間強に渡って行なわれた。

 ビデオの上映まではまだが良いのだが、そこからの2時間はあちらこちらで居眠りしている受講者が見られるようになる。不真面目だと言われればそれまでだが、元売のユニフォームを着た受講者が、机に突っ伏して爆睡している姿を見ると、“ああ、きっと午前中にスタンドでひと仕事してから来たんだろうなぁ。疲れているんだろうなぁ”と同情心が湧いたりする。そのうえ、講師はただでさえ面白くない内容の話を、これまた抑揚のない単調な語り口で話すものだから、よけいに眠気を催させるのだ。聴衆の半分近くが眠っており、その他の人たちもつまらなさそうにしているとあっては、講師もやりがいが無くなろうというものだ。

 ひとり4,700円もの受講手数料を取るのだから、主催者側も、受講者が退屈しないよういろいろと工夫してみてはどうだろうか。例えば、法令などをクイズ方式で考えさせるようにし、優勝者に景品をプレゼントしたり、吉本興業あたりから売れない芸人を呼んできて、危険物にまつわるショートコントをやらせてみたりしてはどうか。売れない女性演歌歌手に『危険物安全音頭』でも歌ってもらうのも良い。不謹慎と言われるかもしれないが、従来のような退屈な講義を聴いているよりも、よっぽど啓もうできるのではないかと思う。

 講習会場を見回すと、たまたまなのかもしれないが、結構年配者の姿が目に付いた。この業界も確実に高齢化が進んでいるようだ。これもたまたまなのだろうが、女性の出席者が数えるほどしかいなかった。そう言えば、ダンプの女性ドライバーは珍しくなくなったが、タンクローリーの女性ドライバーは見たことが無いな~などと、どうでもいい事を考えたりしていた。

 今回の講習ではことしの1月17日に、名古屋市北区の団地で石油ファンヒーターに誤ってガソリンを注油し、大火事を引き起こした事例について、かなりの時間を割いて紹介された。このコラムでも取り上げたが、火元となった部屋の住人はフィリピン国籍の女性で、カタカナや漢字を判読できず、セルフスタンドの自動車用給油レーンで、灯油と思い込んでガソリンをポリ容器に給油したのだという。

 この事故には三つのケアレスミスが重なっていた。一つは、当日、そのSSに危険物取扱者免状をもつスタッフがいなかったこと。二つ目に、インターホンで油種の確認を求めた比人女性の「ケロシン」という言葉をオペレーターが理解できず、ガソリンの許可を出してしまったこと。もう一つは、聞き間違えたとはいえ、ガソリンをポリ容器に給油するのを許可してしまったこと。二重、三重のヒューマンエラーによって、起きてはならないことが起きてしまったわけだ。しかも、このスタンドの経営者は、県の危険物安全協会の会長を務めたこともある“りっぱな”方だったというから、あきれてしまう。

 こういう事件が起こるたびに、セルフを悪者呼ばわりし、もっと厳しく規整しろという奴等がいるが、そもそもセルフシステムに問題があるのではなく、それを経営する人間の資質に問題があるのだ。この事件の教訓を肝に銘じ、灯油のシーズンが近づいたきょうこのごろ、危険物取扱者の免状を持つ我々は、気を引き締めて安全管理・安全運営に努めなければならない。それでこそ、あのモーレツに退屈な講習に耐えて免状を書き換えた我々の真価が問われるというものだ。

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