セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.286『泥棒に追い銭』

GS業界・セルフシステム

2009-12-07

 このあいだ,今年の流行語のことをこのコラムで書いたが,そのあとからGS業界の流行語大賞間違いなしの言葉が現われた。『泥棒に追い銭』である。国民注視の中で行なわれた政府の事業仕分け作業において、地下タンクの老朽化によるガソリン漏洩事故を防ぐ目的で、新しいタンクへの交換費用を国が助成する補助金48億円が「廃止」と判定された。その際、「仕分け人」の一人から、「“泥棒に追い銭”というか、犯罪をする人に、犯罪をやめてくれたらお金を出すという構図に似ている」との発言があり、業界内で物議を呼んでいるというわけ。

 このニュースは、業界紙上でも、ネット掲示板でもすでにいろいろと論じられているので、いまさらの感もあるのだが、特石法撤廃以降のGS業界を、ある意味で「総括」するほどのインパクトがあったので、やはり取り上げてみることにした。

 そもそも、GS経営者は好きこのんで、タンクの老朽化を放置しているわけではない。補助金をもらってなお余りある投資額に躊躇してきたのが実情で、犯罪者呼ばわりするのは的外れだと思う。だが、そんなことよりも、この論議の中でエネ庁の役人の、「GS業界は収益力が低く、補助金で助けてあげないとどんどん廃業する業者が出て、地域経済にも支障をきたす」との説明に対して、「それはビジネスモデルに問題がある」とバッサリ斬られてしまった一幕のほうが大きな出来事だったと私は思う。つまり、何十年後には修繕のための費用が必要になることが分かりきっているにもかかわらず、そのための蓄えを怠り、過当競争に明け暮れてきたGS業界はおかしい、とはっきり指摘されたわけだ。お説ごもっとも、返す言葉もございません。というよりも“よくぞ言ってくださいました”という感じだ。

 元売の増販政策に乗っかり、「採算」というものを顧みずに事後調整頼みで経営を続け、いよいよタンクが古くなったら今度は税金に頼る─“泥棒”は言いすぎかもしれないが、甘ったれるなと叱られても仕方がない。全石連は、補助金廃止を「GS業界存続にかかわる問題」として、経済産業省などに予算復活を陳情するとのことだが、ノーベル賞受賞者も、五輪メダリストもいない我が業界では、あまり効果は期待できそうにない。

 現実は、タンクが老朽化するのを待たずに、毎年、多くのGSが経営が立ち行かなくなって閉鎖に追い込まれているのが実情だ。つまり、今回指摘されたように「ビジネスモデル」に問題があるのだ。その意味で、今回の事業仕分けで、GS業界の脆弱な体質を糺されたのは、むしろ感謝すべきことではなかったか。“泥棒”と呼ばれたことに腹を立てるよりも、この屈辱を「愛のムチ」ととらえて糧とし、自存自衛が可能な業界へと生まれ変わるために一丸となって努力すべきではないか。

 もっとも、そのためには、今回の騒ぎをなぜか静観している元売の協賛が不可欠だ。いまだ販売シェアにこだわり、系列販社に不当廉売すれすれの価格で売らせている元売が、その行ないを悔い改め、採算販売に率先しない限りは、この業界はいつまで経っても“泥棒”か“乞食”でもしないと、食ってゆけない状態が続くだろう。

 返す返すも悔やまれるのは、1998年にセルフ方式が解禁となった時に、元売の量販政策に惑わされず、フルサービスとセルフサービスの棲み分けをきちんと行ない、フルはホスピテリティによる付加価値によって、セルフはローコストによる収益力によって経営が成り立つような構造を築いておけば、今日のような恥ずかしい思いをせずに済んだであろうということである。来年の全石連の賀詞交歓会には、ぜひとも蓮舫さんを来賓としてお招きし、ビシバシとお説教していただきたいと思う。

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