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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.288『暫定税率廃止を廃止?』

政治・経済

2009-12-21

 “そらぁアカンやろ”というのが第一声。民主党・小沢幹事長は16日、政府に重点要望を提出し、衆院選マニフェストに盛り込んだ揮発油税などの暫定税率廃止について、「石油価格は安定しており、暫定税率は維持すべき」と、方針転換を促したのだ。来年度予算編成に向けて、財源不足に苦しむ政府に“助け舟”を出したとのことだが、来年4月からガソリンが25円安くなると期待していた国民に対する公約違反との非難の声が高まることは間違いないだろう。

 税収が37兆円程度にとどまると見られる中、来年度予算の概算要求は過去最大規模の95兆円。しかも、国債発行額を44兆円以内にするという枠をはめたものだから、14兆円も足らない。鳴り物入りで繰り広げた「事業仕分け」も、削減額は7千億円程度にとどまった。そんな状況だから、2.3兆円の税収をもたらす暫定税率を維持するのもやむなしということなのだろう。しかし、「子ども手当て」と並ぶ民主党の目玉政策であった暫定税率廃止を、こうもあっさりと撤回するとは思わなかった。恐らく次回の世論調査で、内閣支持率はまた下がるのではないだろうか。

 鳩山首相も、このままではまずいと感じたのか、党の要望に反して、ガソリン税を5円程度下げれないか政府税調に打診したらしい。総理、それぐらいの値下げなら、私の地元・愛知県日進市ではしょっちゅうやっていますよ。(苦笑) そんなみみっちいことをするくらいなら“ごめんなさい、約束を守れませんでした”と謝った方がいい。あるいは、暫定税率廃止も高速道路無料化も全部公約どおり実施し、財源不足は国債を刷りまくって補うのだ。“公約をすべて実施したら、国の借金がこんなになっちゃいました。このうえは、消費税をあげさせてください”と宣言して、解散・総選挙っていうのはどうだ!?

 昨年の4月に1ヶ月間だけ実現した暫定税率廃止は、政権交代によって庶民の暮らしが一夜を境に変わることをとてもわかりやすく示すこととなった。あの出来事があったので、民主党政権への現実的な期待が高まったのではないだろうか。私の店に給油に来る、近所の介護センターのスタッフが、送迎車の燃料費が軽減されたとずいぶん喜んでいたのを思い出す。折りしも原油が記録的高騰を続けているさなかのことだったので、その恩恵はさぞ大きかったことだろう。ガソリンスタンド、とりわけセルフスタンドがお客様に提供できる最大のサービスは、やはり商品を安く売ることなのだ。

 しかし、GS経営者としては、暫定税率廃止によって、肝心のガソリン需要が喚起されなければ、売上金額の大幅な減少により、資金繰りに窮するおそれがあるのも事実だ。いつも言っているように、この業界は、仕入れ単価がどれだけ上がっても、そこに1円玉を数枚乗っけることしかできない人たちばかりだ。もし、仕入れ価格が25円も下がるのであれば、そこに10円玉1枚ぐらい乗っけさせてもらってもばちは当たらないように思うのだが、そういう賢い商売はだれもしないだろう。また、ガソリン需要が上向けば上向いたで、私のようなPBスタンドへの供給が絞られるのではないかという一抹の不安もある。

 というわけで、暫定税率廃止を“廃止”するということになると、個人的にはがっかりする反面、ややホッとすることもある。しかし、冒頭で述べたとおり、マニフェストで“やります”と謳ったことをやらないとなれば、民主党政権への失望感が一気に広がることになろう。この問題に限らず、沖縄の基地問題にせよ、温室効果ガスの削減目標にせよ、子ども手当ての支給にせよ、民主党幹部のみなさんは、いまナポレオンが残した次の言葉をかみ締めておられるのではないだろうか。『約束を守る最上の方法は決して約束しないことだ』─。

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