セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.289『寅年』

オピニオン

2010-01-04

 年明けの愛知県・日進市の市況は、レギュラーガソリン116円(!)となっている。前途多難の一年をうかがわせるスタート。まさに『前門の虎』と言うべき状況だ。元売各社の直営セルフがいつ果てるともなく価格戦争を繰り広げている様は、『両虎相闘えば、勢いともに生きず』といったところか。いずれにせよ、猛獣同士のけんかに否応なく巻き込まれる弱小スタンド経営者はたまったものではない。

 それにしても、相変わらずの安売り合戦を繰り広げているところを見ると、どの店も思ったように売れていないんだろうな~と推察する。『虎を描きて猫に類す』とは、見事な虎を描こうとしてくだらない猫の絵になってしまうことで、りっぱすぎるものや大き過ぎるものを求めたがために失敗してしまうことのたとえ。千㌔級の大型セルフスタンドを造ってはみたものの、縮小する市場の中で目論み通りに行かず、さりとて『騎虎(きこ)の勢い下りるを得ず』で、やめるにやめられないまま赤字がかさんでゆくとなれば、いずれ潰れてしまうだろう。

 かつてはアジア大陸に広く生息していたトラだが、いまや絶滅の危機に瀕しているという。日本のGSもそれに劣らぬ勢いで淘汰が進んでおり、今年も数多くのガソリンスタンドが閉鎖され『トラ柵』に囲まれることになるだろう。そして、その中には相当軒数のセルフスタンドも含まれることになろう。

 セルフスタンドが日本に誕生したのは、いまから12年前の1998年・寅年のことだった。この年は長銀・日債銀が相次いで破綻するなど、平成不況の真っ只中で、自殺者が前年より8千人以上増加し、初めて3万人の大台に乗った。それ以来12年連続で自殺者は3万人を越えている。日本のセルフスタンドはそうした陰鬱な時代の中で成長してきたのだ。この間に、GS業界の主役は、代理・特約店から元売販社へと変化していった。セルフという便利なシステムを得たことで、元売は『虎に翼』状態となり、もはや代理・特約店の力を必要としなくなった。系列販社による直販体制を推し進めていったが、同時にそれは『市に虎を放つ』が如くとなり、冒頭で紹介したとおり、市況を悪化させ、GS業界の自殺者を増やしかねない状態を生じさせているのである。

 まだまだ厳しい経営環境が続く2010年だが、これこれこうすれば必ずもうかるという『虎の巻』のようなものはない。だが、GS経営者もただ手をこまねいているわけにはゆかない。かつて、元売から『虎の子』扱いされていた時代をいつまでも懐かしがっていてはダメだ。生き残るために、セルフ化にせよ、PB化にせよ、『虎視眈々』とチャンスをうかがい、好機と見れば行動を起こすべきだ。無論、そうするためには経済的にも、精神的にも少なからずリスクを負う覚悟が必要だが、『虎穴に入らずんば虎子を得ず』である。一方、行動する勇気もないのに、新年会の酒席で『大虎』になって強がったところで、所詮は『張子の虎』だ。

 『虎を養いて患(うれい)を残す』という格言もある。除くべきものを除かずにそのまま残しておくと、あとになって災いの元となるという意味だ。私の提唱するローコスト・セルフは、まさにあらゆる無駄を除き去り、この先に生じるであろう難局に耐え得るべく体質を強化してゆこうというものだ。12年の歳月を経て、セルフの優位性は揺るがぬものとなった一方、これまでのように、セルフにさえすれば売れる時代も終わりを迎えようとしている。『時に逢えば鼠も虎となる』との言葉もある。本格的な減販時代を迎えたいまこそ、何をすべきかを見定め、飛躍の足がかりを築きたいと願う私は、今年48歳になる年男でございます。本年もどうぞよろしく…。

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