セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.292『現金で買い、現金で売る』

GS業界・セルフシステム

2010-01-25

 掛売りのリスクは、言うまでもなく「貸倒れ」だ。支払いが滞りがちになってきたら要注意で、貸倒れ被害を抑えるために、掛売りをお断りしなければならない。ガソリンスタンドの店頭で、「社長さん、これ以上掛売りでは給油できません。きょうから現金でお願いします」と言い渡すのには勇気が要る。言われた途端に客の顔色は変わり、「永年取引してきたのに何てこと言うんだ!」と怒り出す。「お客様」が「債務者」に変わる瞬間である。

 日本航空が取引きする諸外国の燃料供給会社も、経営破たんが囁かれ出した昨年夏ごろから貸倒れ不安を抱くようになり、保証金の大幅な積み増しをJALに要求していたという。もし支払いが滞れば取引停止となり、JALの飛行機は世界各地の空港で給油を断られ、ガス欠で帰途に就けなくなる恐れがあった。そうした中でなされた今月19日のJALの会社更生法申請は、最悪の事態を避けるべく間一髪のタイミングで決断されたものだったらしい。

 日本を代表する航空会社の経営者が、ケタこそ違え、燃料代金支払いの資金繰りという、一介のGS経営者と同じような悩みで夜も眠れなかったかと思うと、何だか哀れに思える。結局、会社経営に最も必要なものは、人材や資産、いわんや歴史や伝統などではなく、現金であるということか。カネがなければ、たとえJALでも相手にしてもらえないというのが現実なのだ。

 先月の25日に、東海地方で民事再生法を申請して倒産した石油製品販売業者、いわゆる業転業者の負債額は約22億円。その大半は、掛売りで製品を供給していた卸元業者がかぶったとのことだ。こうした事件が起こるたびに元売や商社の与信管理は厳しくなり、いまではGS業界、とりわけPBスタンドでの取引は原則現金先払いとなっている。今後、この方式が比較的与信管理がぬるいとされている民族系元売にも導入されてゆくのは必至だ。そうなれば、多くのGSでは、客の経営内容如何を問わず、掛売りができなくなってくるだろう。現金で仕入れなければならない以上、現金で販売しなければ資金繰りはまわって行かないのだ。

 掛売り全盛の時代から、現金で仕入れ、現金で販売してきたGS経営者のこんなエピソードがある。そのスタンドの隣地は、自分の父親の所有する農地だった。その土地の耕作をしていた父親が、耕運機に乗って息子が経営するスタンドへやってきた。現金を持ち合わせていなかったので、「あとで払うから耕運機に燃料を入れてくれ」と頼んだところ、息子はそれを断ったのである。「自分の親父が信用できないのか」と父親は怒声をあげたが、息子は「ウチは現金でしか売らないと決めたのだから、誰の頼みでも絶対に掛売りはしない」と突っぱねた。そのスタンドは、いまではその地域で圧倒的なシェアを誇る量販店となっているが、現金オンリーの妥協のない経営姿勢が今日の成功を導いたと言える。

 こうした独立系GSは、元売から期末調整などで助けてもらうこともなければ、セルフ化のための支援を受けることもない。従って、手元にある現金の有り難味をよく知っている。少しでも安く仕入れ、コストを切り詰めることで、日々無駄遣いを抑える努力を払っている。彼らから見れば、「俺たちにはお上が付いている」と豪語し、ずぶずぶのコスト高経営を続けた挙句に破綻したJALは、まさに“まいた種を刈り取った”としか映らないであろう。

 JAL利用客がこれまで貯めてきた「マイレージ・ポイント」サービスは、新生JALでも引き続き継続される。これまでは電子マネーやクレジットに対してポイントが付与されてきたが、この期に及んだからには、搭乗料金の決済も、現金先払いのプリペイドカード方式にしてはどうだろうか。高額プリカを買うほどマイルがたまるようにして、とにかくキャッシュをかき集め、世界中の空港で最安値の燃料を現金で買って飛行機を飛ばす。社内サービスは大幅に見直しすべてセルフに。JAL再建の秘策とならないか?!

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