セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.297『深く静かに潜航せよ』

GS業界・セルフシステム

2010-03-01

 先週“セルフ銀座”日進市でちょっとした事件が起きた。大手GSチェーンが展開していた大型セルフスタンド2店舗が、平成22年2月22日21時をもって同時に閉店したのだ。どうせなら22時まで、いや、22分まで営業すれば2が9つのぞろ目になったのに…。

 どちらのスタンドも、広い敷地に計量機が並び、整備工場と洗車場も完備した大型店であった。1軒目が営業を始めたのは、いまから5~6年ほど前だっただろうか。いや、もうちょっと前だったかな? 何せ日進市では、そのころから、人口増加の著しいこの地域の需要を当て込んだ各元売の直営販社や大手代理店が競うように大型セルフ店を建設し始めたので、どの店がいつごろできたか、いちいち覚えていられなかった。

 当該スタンドはその中でもひときわ大型で、日進市中心部を南北に走る幹線道路沿いに立地し、オープン当初はコンビニ併設店舗だった。コンビニはしばらくすると閉鎖・撤去され、跡地は洗車場となったが、好天の土・日曜日などはまずまずの賑わいを見せていた。そして、3年ほど前に、その店から約1.8㌔離れた、同じ道路の反対車線に2軒目がオープンした。この2軒目の進出直後に同じ路線のGSが2軒、“参りました”とばかりに、相次いで撤退していった。

 ところがこのたび、まだ建設して3年足らずのその店も含めた2店ともが閉店となった。その理由を知る由もないが、うまく行っていたのであればやめる必要は無かったであろう、というのが率直な感想だ。今後は、それぞれの店舗が新たな運営者によって営業を再開するのか否かが注目されるが、いまのうちに浮動客を取り込もうとして、周辺の価格競争が一段と激化するのではないかとの懸念もささやかれている。

 しかし、降りしきる雨の中にたたずむ、武装解除された“巨艦”の姿を見れば、きょうまで繰り広げられてきた採算無き戦闘がいかに無益であったかを思わずにはいられないはずだ。この先も、この闘いを続けてゆくのであれば“あすは我が身”となることを肝に銘じなければなるまい。とはいえ、日進市のセルフスタンドは、大半が元売販社か大手代理店によるものであり、店舗閉鎖にそれほど感傷的でないも事実だ。大手は、造るスピードもさることながら、壊すスピードも速い。まだ新しい施設や設備もためらいなく廃棄できる。借金やリース代を抱え、やめるにやめられずにいる中小・零細のGS業者から見ればうらやましい限りだ。

 繰り返し述べるが、今回の大型セルフ店の2店同時閉店の真の理由を私は知らない。だが、やはりあれだけの大型店舗を運営・維持してゆくには、相当のコストがかかっていたのではないかと推測する。ちなみに、当該スタンドを運営するGSチェーンのホームページの「Q&A」の中には、「セルフで給油するのだから、もっと安くならないの?」という質問があり、それに対して、「…できれば地域最安値となるよう経営努力をしております。しかし、お客様の安全確保などに最新の設備を施しており、また、サービススタッフも常時複数配置しているため、必ずしも従来のガソリンスタンドとの比較でコスト削減が出来ておりません」と“正直に”答えている。

 セルフはたくさん売るためのシステムではなくコスト削減のためのシステムなのだと、このコラムで念仏か呪文のように繰り返し唱えてきたが、現下の経済状況においては、その重要性はいやますばかりだろう。不沈艦などというものは存在しない。まして巨艦であればあるほど、沈没のリスクは大きい。むしろ、セルフスタンドのあるべき姿は、コストという“水圧”に耐えることのできる潜水艦なのだ。いまだセルフ店の新規出店が続く荒波の日進市において、我が「セルフスタンド日進東」は、きょうも深く静かに潜航中である。

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