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和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.298『龍馬の気分で』

オピニオン

2010-03-08

 歴史ファンは“戦国派”と“幕末派”に大別されるのだという。で、“幕末派”のヒーローといえば、これはもう、坂本龍馬がダントツの人気を誇る。今年のNHK大河ドラマ「龍馬伝」では、福山雅治が龍馬を実にかっこ良く演じており、龍馬人気はますます沸騰しそうだ。

 ところで、龍馬ファンに向かって決してしてはならない質問というのがあるそうな。それはズバリ、「結局、坂本龍馬って何をした人なの?」という質問。この質問をしたら最後、龍馬ファンから、「ナメたらイカンぜよ」とばかりに、龍馬が幕末の激動期をいかに駆け抜けていったかを延々と聞かされる羽目になるとのことだ。

 確かに、坂本龍馬という人物は、33年間の生涯中、肩書きらしいものをほとんど持たず、歴史の表舞台に登場することもなかった。有名な薩長同盟の仲介者ではあるが、日本の歴史を変える重大事の保証人を、一介の浪人が務めたなんて不可思議な話ではある。逆に言えば、それほど人を惹きつける魅力に富んだ人物だったのだろう。龍馬は生前、「事は、十中八九まで、自らこれを行ない、残り一二を、他に譲りて功をなさむベし」と語ったそうだが、明治維新の立役者でありながら、生涯、何の行賞も受けなかった龍馬の生き様は、ただただカッコエエ。

 そんな龍馬は、GS経営者にとっても啓発となる幾つもの名言を残している。例えば、「俺は、落胆するよりも、次の策を考える人間だ」とか、「俺は、昨日の俺ならず」といった言葉からは、失敗をいつまでも悔やんだり、過去の成功体験にとらわれたりしないで、常に変化に対応し続けることの大切さを学び取ることができる。

 この期に及んでも、PB化やセルフ化を躊躇する経営者は少なくない。龍馬は「何事も思い切ってやってみることだ。石ころ同様、骨となって一生を終える」と語っている。幕末の嵐の中に徒手空拳で飛び込んでいった龍馬らしい超ポジティブ語録はほかにもある。「男なら、たとえ、溝の中でも前のめりで死ね」─龍馬的には、元売に恨み辛みを言いあげてもどうにもならんちゃ、座して死を待つぐらいやったら、PBでも、セルフでもやってみたらええがぜょ、といったところか。

 「英雄とは、自分だけの道を歩く奴のことだ」という言葉も、龍馬が語ると重みがある。周りから何と言われようとも、己の信じた道を突き進むという生き方は、誰もが憧れると同時に、よほどの天才か馬鹿でない限りできない生き方だ。あの西郷隆盛をして「天下に有志あり、余多く之と交わる。然れども度量の大、龍馬に如くもの、未だかつて之を見ず」と言わしめた坂本龍馬は、ああ、やっぱカッコエエ。

 坂本龍馬を英雄たらしめたのは、幕末という時代そのものだと思う。天下泰平の世に生まれていたなら、土佐の下級武士として平凡な一生を送っていたのではなかろうか。黒船来航という、日本がひっくり返るような出来事に端を発した激動期だったからこそ、龍馬のパーソナリティやアイディアが必要とされたのだ。

 今日のGS業界も、幕末ほどのことはないかもしれないが、やはり大きな変化のただ中にある。系列の傘の下で安穏としていられる時代は過ぎ去り、PBも販売量を追い求めるだけでは生き残れなくなっている。元売直営販社も親会社が赤字となる中、拡大一辺倒の戦略を見直さざるを得なくなっている。これまでの価値観や商習慣が崩壊し、先の見通せない時代だからこそ、龍馬の「人間というものはいかなる場合でも、好きな道、得手な道を捨ててはならんもんじゃ」という言葉をかみしめ、自分の信じる道を歩んでゆきたい。ローコスト・セルフという“王道”を…。

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