セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.299『混入事件について』

GS業界・セルフシステム

2010-03-15

 『北海道経済産業局は12日、茂田石油グループ(本社・旭川)が経営する道内5ヶ所の給油所で灯油が混入したハイオクガソリンが販売されたとの報告を受けたと発表した。道経産局と元売の昭和シェル石油によると、今月3日に帯広市の帯広給油所で灯油を積んだタンクローリーの運転手が、誤って灯油をハイオクガソリンのタンクに入れた。2万リットル容量のタンクに2,600リットルの灯油が混入したという。混入したハイオクの量は不明。同給油所でハイオクを購入した客から5日、「車の調子がおかしい」との苦情があったため、確認したところ、灯油が混入しているのが分かった。このため、同日に12,000リットルを抜き取り、ハイオクを同量入れた。しかし、抜き取った灯油混入のハイオクを8日に旭川市の旭川BP台場給油所ほか4ヶ所に配送し、ハイオクタンクに入れて販売したという。昭和シェル石油側は10日から11日にかけて茂田石油グループ5店の販売中止を要請したが、5店で延べ536台に灯油が混入したハイオクが販売されたという』─3月13日付「朝日新聞」。

 北海道随一のGSチェーン店で起きた事件を、地元メディアは大きく取り上げている。抜き取られた混入ガソリンを、「判断ミス」で5店舗に配送してしまったとのことだが、もし仮に、捨てるのはもったいないとして、4店舗でそれをシェアして灯油の比重を薄め、意図的に混入ガソリンを売ろうとしたとすれば、それはりっぱな“製品偽装”であり、豚肉や鶏肉の混ざったミンチ肉を「牛肉100㌫」と偽って販売した「ミートホープ」と同じことになってしまう。茂田石油は、今回の事件がどのような「判断ミス」によって生じてしまったのかということを積極的に検証・公表する必要があると思う。

 私も、いまから5年ぐらい前に、ある業転屋から仕入れた軽油に灯油の成分が3割超含まれているということが経済産業局の抜き取り検査で判明し、引き取らせたことがあった。業転屋が、いわゆる“なんちゃって軽油”を卸したのである。業者を問い詰めると、「すみませんでした、利幅が薄いものですから灯油を混ぜました」とあっさり白状し、「いや~バレないと思っていたんですがね~」と、悪びれる風でもない。

 あとで別の業転屋に聞いた話では、件の業者は、業転屋仲間の間では“博士”と呼ばれていたのだという。つまり、ガソリンや軽油の純度を、何をどう使えばバレずに薄めることができるかという知識を持つ人物だとの意味である。幸い、“なんちゃって軽油”を給油した客からの苦情は1件もなかったため、その業転屋を告訴するまでのことはしなかったが、それから1年も経たないある日、“博士”から電話があり、今度はガソリンを買ってくれませんかと言う。「今度はちゃんとしたものですから」─。

 彼の言う「ちゃんとしたもの」というのは、我々とは違う意味を持つものであることは言うまでもない。「NO」と即答したが、それにしても何という図々しさであろうか。こういう業者が暗躍しているかぎり、ノンブランドのガソリンスタンドに対する偏見を拭い去ることはできないだろう。また、10日に1度の品質分析のために、石油協会から年間18万円も徴収されるという差別待遇も改まらないだろう。

 一方、今回の茂田石油の事件で、ある意味、茂田石油以上に危機感を強めていると思われるのが、昭和シェル石油だ。無理もない。自社のマークを掲げるスタンドで、「プレミアムガソリン」として販売されたものがエンジントラブルを引き起こしたとあっては、ブランドに大きな傷が付いてしまう。シェルのホームページでは「重要なお知らせ」として謝罪したうえで、詳しい報告と対応が公表されているが、この事件を機に、系列店の仕入れ管理を、一段と厳しくすることになるかもしれない。今回の事件を、対岸の火事と見るのではなく、PB店も系列店も、各々の立場で問題意識を持って見守るべきではないだろうか。

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