セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.300『洗車収益』

GS業界・セルフシステム

2010-03-22

 「春のガソリンスタンド」とかけまして、「野球」と解きます。そのココロは、「西(二死)からチャンスが到来します」─。何が西からやってくるかといえば、黄砂だ。中国大陸のゴビ砂漠やタクラマカン砂漠から偏西風で運ばれてくる大量の砂は、ガソリンスタンドに洗車特需をもたらす“恵みの砂”というわけだ。

 だが、不景気の昨今、多くの車が列を作って並ぶのは、1回300円のドライブスルー洗車機の前で、付加価値の高いワックス洗車やポリマー洗車の売上げは、皮算用どおりに伸びないのが現状のようだ。また、注文があればあったで、人手不足で台数をこなしきれず、みすみす利益を逸失しているGSも少なくない。人手を集めたとしても、今度は高品質の洗車を提供するために必要な“熟練工”が不足しているという問題もある。そんなこんなで、せっかくの大量得点のチャンスに、犠牲フライの1点だけ、という結果になりかねない。

 ガソリンスタンドが年間を通じて、洗車収益を安定的に稼ごうとするならセルフにすべき、と言うのがかねてからの自論だが、それは広い敷地を要しての「トータルカーステーション」なるものを目指すと言うことではない。給油施設を「ガソリンの自動販売機」という位置付けとし、大半のスタッフは洗車に専従させる体制をとる。店舗レイアウトも、洗車作業をメインとしたものへと改造し、洗車専門店への変身を図るぐらいのことをしなければ、洗車でもうけることは難しいだろう。

 ところで、洗車専門店を経営する私の知人によれば、洗車は「水洗いで十分」なのだそうだ。いや、むしろ「水洗いが最適」なのだという。「ワックスだの、ポリマーだのを塗りたくるのは、車の塗装の劣化を早めるだけ。女性の化粧と同じこと。でも、そんなこと言ったら自分で自分の首を絞めることになっちゃうけどね」(笑)─。

 彼曰く、自分の店に来る顧客の多くは、「ビョーキ」なのだそうだ。「自分の車がいつもピカピカに輝いていないと気が済まない、一種の強迫観念に駆られている人たち」なのだと言う。黄砂が降った日の夜、たまたま彼と会食したのだが、「あすは朝からフェラーリのコーティングの予約が入っている」とのことだった。持ち主はやはり「ビョーキ」の人だそうで、車体を舐めるようにチェックして出来栄えを確かめ、ちょっとでも傷があろうものなら大騒ぎになるので、精神的に相当キツイ仕事なのだという。総額10万円を越す作業なのだが、「できればやりたくねぇよ」とぼやいていた。

 とにかく、洗車でもうけるためには時間と労力・技術が必要であり、給油などにかかずらっていては、安定した収益をあげることはかなわない。車検やレンタカーなども同様で、もはやガソリンスタンドの従業員が片手間でできるようなものではない。それでもやると決めたなら、本腰を入れて取り掛からねば、かえって経営状態を悪化させるだけだ。

 かく言う私は、洗車をはじめとする油外商品にほとんど興味がない。いや、実のところは、油外商品を売るために人を雇い、設備を整え、宣伝費をかけてなお利益をあげる自信が全然ないのである。とりわけ日進市には、車のことなら何でもござれ的な大型セルフ店が軒を並べており、いまさら事を起こしても太刀打ちできそうにない。だが、この激戦地で約10年間、しぶとく生き延びてこられたのは、頑なに「ガソリン自販機」のスタイルを守り続けてきたからだと自負してもいる。

 縮小する市場の中で、相変わらず価格競争に明け暮れているこの業界で生き残るためには、ローコスト・セルフに徹するべきだとの自論は、このコラムの連載を始めた6年前から今日までまったく変わりない。むしろその確信はますます強まっている。

 「セルフスタンド日進東」とかけまして、「平和な世界」と解きます。そのココロは、「洗車(戦車)は必要ありません」─。

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