セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.303『新仕切価格とどう向き合うか』

GS業界・セルフシステム

2010-04-12

 6月から統合されるエネオスとジョモの新仕切価格体系が発表された。4月9日付「油業報知新聞」によると、陸上RIM(業転)から算出する「製油所EX価格」に「フレート」、SS向け販売コスト4円/㍑を加算して算出されるとのことだ。「フレート」というのは輸送運賃のことで、転送運賃、油槽所経費、販売運賃の合計を適用するらしい。SS向け販売コストとは、いわゆる“ブランド料”というやつで、日本一の元売のマークを掲げることによって得られる数々の恩恵のための負担がたったの(!)4円/㍑というわけだ。

 この仕切価格に、「特約店規模格差」、「SS規模格差」、「制度割引」といった各種インセンティブが加わる。このうち、「SS規模格差」は、三品(ガソリン・軽油・灯油)の合算数量を8段階に区分し、月販三百㌔以上から百㌔毎に十銭ずつ値引きし、千㌔以上で最大1円の値引きが適用される。何と慈悲深い制度ではないか。月販百㌔そこそこの“閉めちゃっても構いませんよ”的な店でも、千㌔級の店とわずか1円の差しかない仕切価格で仕入れることができるとは!

 さらに、これらの価格に「上限価格」、「下限価格」が設定されているのだが、ややこしいし、正直どうでもよいので説明は省略。要は、エネオス・ジョモに限らず、元売系列のGSは、この先も元売の都合で改変されるルールに対応(振りまわされ)しながら、価格競争を戦ってゆかねばならないということだ。そして、もっとも肝心な点は、そのルールは、いつでも“ルールを作る側”の都合の良いようにできているということである。元売には、自らが出血してまで、系列店を助けようなどという発想はない。冷酷なように聞こえるかもしれないが、至極当然のことだ。それが気に食わないなら、系列から離脱するしかない。

 私のように、算術が苦手な独立系零細店の経営者は、原油価格、FOB、CIFなどの知識は一切ご無用。RIM価格やTOCOM相場に一喜一憂することもない。市中に出回る業転ガソリンを丹念に仕入れ、それを可能な限りコストをかけずに売るだけだ。系列に属さないGSを、ひと昔前は「無印」と呼んでいたが、いまでは「プライベート・ブランド」と呼ぶようになっている。そのほうがカッコイイらしいのだが、私は「無印」の方がしっくり来る。“ブランド”などという重たいものを、たとえ呼び名だけとはいえ背負いたいとは思わないのだ。いわんやブランド料なんて払うのは真っ平御免だ。

 こうして書くと、ずいぶん気楽にやっているように見えるかもしれないが、もちろん、先行き不安がないと言えばうそになる。だが、それは無印も系列も同じことだし、予測不可能なことが次々に起きているこの時代に、先々のことを思い煩ったところで詮無いことではないか。最近ブームのあのP・ドラッカー先生も、「未来を語る前に、いまの現実を知らなければならない。現実からしかスタートできないからである」と言っておられる。

 「いまの現実」─それは、まさしく自分の店の経営状態を直視することだ。どれだけの販売力があるのか、どれだけのコストがかかっているのか、どれだけの利益(損失)が出ているのかなどを冷静に分析し、「未来を語る前に」、いますぐにできることに着手することが賢明な道である。それは、会社によって異なるだろうが、これだけは言えると思う。すなわち、どれだけルールが変わろうと、いつの時代も利益を出す方法は「入りを図って、出るを制す」ことであるということ。そして、「入りを図り」、それを実行し、成果をあげるまでにはそれなりの時間を要するが、「出るを制する」ことは、すぐに着手することができ、すぐに効果があるということだ。では、どのようにして「出るを制す」べきか。再びドラッカー先生のありがたい言葉を引用しよう。「コスト管理とはコスト削減ではなく、コスト予防でなければならない」─。付け焼刃的なコスト削減ではなく、コスト予防となる仕組みを作ること、すなわち、ローコスト・セルフシステムを導入することではないだろうか。

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