セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.304『在庫のはなし』

GS業界・セルフシステム

2010-04-26

 温かくなったと思ったら次の日は霜が降りるほど冷え込み、そのあとまた汗ばむほどの陽気となり…といった具合に、今年の4月は気温の乱高下を繰り返した。衣類の入れ替えのタイミングがなかなかつかめず、苦労しておられるご家庭も少なくないだろう。そして、石油ストーブの灯油の買い置き量も、今年のような気候では調節が結構難しかったのではないだろうか。

 灯油をまだ少し買うか買うまいかで悩むのは我々GS経営者も同じこと。なるべくデッドストックを抱えたくないので、ちょこちょこと補充するのだが、今年のようにいきなり寒くなったりするとガス欠する恐れがあるため、なかなか難しい。しかも、全量業転商品を仕入れている私のような“無印スタンド”では、毎回16~20㌔ローリーの詰め合わせで届けてもらわなければならないので、他の油種とのバランスを考えながら発注しなければならない。元売が自動配送システムで勝手に注ぎ足していってくれる系列店のみなさんがうらやましいです。

 業転商品の大半は現金先払いで仕入れなければならない。したがって、資金繰りの観点からも、なるべく在庫を抱えずにジャスト・イン・タイムで仕入れてゆきたいのだが、私の店のように、レギュラーガソリンが10㌔タンクと20㌔タンクに分かれていて、それぞれが別個のアイランドにつながっているようだと、20㌔タンクはまだ余裕があるのに、10㌔タンクのほうがガス欠しそうになってしまうということで、やむなく一日早くオーダーをいれたために資金繰りの計画が狂ってしまうということもある。なかなか思いどおりには行かないものだ。

 むかし、ある老舗の履物屋の店主に「あんたらはええなぁ、品物の数が少にゃあうえに、仕入れたもんが2~3日のうちには売れてまうんだで。わしらの商売は、品揃えを豊富にせないかんうえに、売れなんだらもう次の流行がきてまうもんだでおしまいだわ」というぼやきを聞かされたことがある。また、近所の中華料理店の大将は、「最近は一日に数人しか来ない日がある。そのために食材を仕入れておくと大損するので、夜は予約制にして、予約のない日は店を閉めることにした」とのことだった。確かに、我々の抱える在庫は、流行りすたりがないうえに、賞味期限もない。在庫管理という点では、他の小売業者に比べてGS経営者はずいぶんと楽かもしれない。

 ただし、油外商品を手広く扱っているところは、オイルやタイヤなどを相当程度在庫として置いておかねばならない。多種多様な自動車部品を扱おうものなら大変だ。例えば、新日本石油(当時は日石三菱)が1998年から展開してきた「Dr.Drive」だが、当初、好成績を挙げ優秀店とされたあるGSは、月間売上額の倍近い金額相当の商品在庫を抱えていたという。「あらゆるお客様のニーズに即座に対応するため」とのマネージャーの熱意ゆえの結果だが、本社からやり過ぎだとして「ドクターストップ」がかかってしまったとか。

 これはイカンと思ったのかどうか、新日本石油はソフトバンクと合弁で2000年に「イーショッピング・カーグッズ」という会社を設立、インターネットのウェブサイトや系列GSの端末機を利用して自動車部・用品を注文し、数日後に最寄のGSで受け取り・支払いをするという「画期的な」(大澤・日石三菱社長)システムを立ち上げた。店頭に在庫を抱えない「地上最大のカーグッズショップ」(孫・ソフトバンク社長)となるはずだったが、予測を大幅に下回る売上が続いて採算が取れなくなり、わずか2年でサービスは終了。会社も解散となった。

 セブン・イレブンの鈴木敏文会長曰く、「在庫が積まれているのを見ると死体置場にいるように感じる」。商品を途切れることなく販売しつつも、在庫リスクを最低限に抑えるにはどうすればよいか。セルフ・フルという業態の違いこそあれ、すべてのGS経営者が取り組まなければならない重要課題のひとつである。

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