セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.305『トイレについて』

GS業界・セルフシステム

2010-05-03

 行楽シーズンを迎えると、他府県ナンバーの車やレンタカーなどの来店が多くなるガソリンスタンドもあることだろう。そして、そうした客の多くが給油のついでに、(あるいは給油もせずに)立ち寄るのが、トイレだ。私は、10年前に閉鎖中だったいまの店舗を賃借し、セルフスタンドに改造するに当たり、迷ったことがあった。それは、セールスルーム内を監視室と券売室に分離するなどしてパーティションで仕切る際に、既設のトイレを客が利用できるようにするかどうかということだった。

 “何を寝ぼけたこと言っているんだ。お客が利用できるようにするのが当然じゃないか”と思われるかもしれないが、当時の私は(いまでも)、自分の店を、純喫茶ならぬ“純セルフスタンド”にしようと考えていて、来店客が給油以外に何もすることがない(できない)施設にするつもりだった。だが、自分自身、移動の途中で用を足したくなった時、コンビニや喫茶店に行くことがあるので、トイレぐらいは客が利用できるようにしようと“妥協”したのだったが、そのことを後悔するのに時間はかからなかった。

 私の店は、ゴミ箱を置いていないのだが、トイレにはペーパータオルなどを捨てる備え付けのごみ入れがある。オープンして半年も経たないある夜、スタッフが男子トイレに入ったら、そこから煙が出ているではないか。どうやら、タバコの吸殻の火がくすぶっていたようで、大事には至らなかったが、以後、夜11時から朝7時まではトイレを使用できないようにした。トイレというのは厄介な場所だ。監視カメラを取り付けるわけにはゆかないので、昼間でも防犯上死角となるのだが、「トイレを利用する方はスタッフに声をおかけください」などとして、そのたびにいちいち応対するのもこれまた面倒だ。また、トイレをきれいに利用してくれる客ばかりではない。いや、むしろそのような客は少ない。清掃するたびに、客の公衆エチケットの低下を嘆かわしく思うきょうこの頃である。水道代や、トイレタリー用品の費用も、大した額ではないとはいえ、本当に必要なコストなのだろうかと感じる。

 中には、「ガソリンスタンドの良し悪しはトイレがきれいかどうかで見分けられる」などとほざく馬鹿がいる。確かに、トイレに限らず、店舗の美化は大切なことではあるが、トイレをピカピカにすればガソリンが売れるわけではない。トイレの美化とガソリン販売との相関関係を数値化したデータというものにお目にかかったことがない。それどころか、こんな笑える話がある。

 ある外資系元売の支店が、系列店を巡回して美化審査を実施したところ、トイレも含めて最低得点だったスタンドが、その支店管内でもっともガソリンを売る店だったという。その店の経営者は、「元売様から“二度と来たくない”という評価をいただいたうちのスタンドが、一番ガソリンを売っているのはなぜかネェ」と言って、ニヤリ。その答えはもうおわかりだろう。

 繰り返し書くが、私はGSのトイレが汚くてもよいと言っているわけではない。むしろ、衛生面の観点からもこまめに掃除をするよう常々スタッフにも言ってある。だが、そもそも私の店のような、給油しかできないセルフスタンドに、客のためのトイレが必要なのだろうかとも考えてしまう。事実、量販セルフスタンドでは、客の滞留を防ぐため、トイレの利用を制限しているところもある。

 ところが、最近のGS、とりわけセルフスタンドの一般的な傾向は、トイレにますます金をかけているようだ。暖房便座や除菌装置は当たり前、バリアフリーにしたり、赤ちゃんのオムツが替えられる設備まである。なぜ、そこまでトイレを充実させるのか。“また来たい”と思わせる店作りの一環? いや、私の考えはこうだ。客、とりわけ女性客をきれいなトイレでくつろがせ、引き止めることによって、油外商品を販売する機会を作ろうとしているのではないか。トイレに行っているあいだに、勝手にボンネットを開けられて、あれこれ勧められたという経験をした人は少なくないだろう。きれいで豪華なトイレをタダで利用させるほど、今日のGS経営は甘くはないのだ。

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