セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.308『むかしむかし』

GS業界・セルフシステム

2010-05-24

 近年、GS業界ですっかり聞かれなくなった用語に“ハイオクレシオ”がある。ガソリンの販売数量に占めるハイオクの比率のことで、ひと昔前は(ふた昔ほど前か?)どの元売も、「マグナム」「ダッシュ」「マッハ」など、威勢の良い商品名を冠して拡販に躍起となった。かくして、インセンティブというにんじんをぶら下げられた各社系列店も、レシオ、レシオと念仏のように唱えてキャンペーンを展開したのであった。おかげで、原付にまで半強制的にハイオクを給油する始末。ブームの火付け役となった昭和シェル石油の系列店の中には、ハイオクガソリンしか扱わないという“専門店”まで登場した。しかし、ある元売では、大々的なハイオク拡販の全国コンペを開催したところ、75%というダントツのレシオをマークした特約店の月間ガソリン販売総数量がたったの30㌔だったため、ドッチラケになったという笑い話もあった。

 まさに“ハイオク狂想曲”と名づけたくなるような一時代があったのだが、いまや「ハイオクをぜひお試しください!」などと声かけするGSは皆無に近い。自動車の高性能化に伴い、ハイオク仕様車は年々増加しているにもかかわらず、である。その理由のひとつは、セルフスタンドの登場とその発展にあると言えるだろう。ハイオクを入れたい客は、スタッフに勧められずとも、自分の意思で給油してゆく。ハイオクを20㍑だけ給油し、残りはレギュラーで満タンにする客もいる。そんなこんなで、セルフに改造した結果、声かけをしていたころには超えられなかったハイオクレシオ20㌫をあっさりクリアしたという例はざらにある。

 少し前の話だが、私の店で、レクサスに乗った年配の女性客に、「うっかりレギュラーを入れてしまったのだが大丈夫でしょうか。このあいだまで行っていたスタンドでは、レギュラーを入れると車が壊れると言われていたので…」と尋ねられた。ハイオクは車の性能を十分引き出すうえ、洗浄効果や燃費向上ともなるが、レギュラーを入れたからといってクルマが壊れることはありませんと教えてあげると安心して帰ってゆかれた。相変わらず、客の無知に付け込んででたらめな売り方をしているGSがあるようだ。いや、そんなスタンドでは、スタッフ自身もハイオクとレギュラーの違いなんてわかっていないのだろう。

 ハイオクと同様、かつてはどこのガソリンスタンドでも声かけしていたのが、現金会員への入会だ。その昔、ゼネラル石油が導入した「UNOカード」システムが大ヒット、その後元売各社が競って現金会員制度を導入した。会員には毎月のようにダイレクトメール(DM)を発送し、再来店を促す。DMの内容は、ティッシュなどの景品引換え、いわゆる“ものくれ”がほとんどで、元売からの販促インセンティブがその原資となった。だが、元売からの援助がなくなり、気前良く景品をばらまくことができなくなったのとほぼ同時並行でセルフ時代が始まった。その結果、来店客の名前や住所を管理してDMなど送らずとも、価格看板さえ掲出しておけば客が来ることが見事に証明されてしまった。

 現在でも、「会員価格」なる表示が多くのセルフスタンドで見られるが、会員カードなどなくてもその価格で給油できるか、計量機の横に会員カードが無造作に置いてあり、「ご自由にお取りください」との表示。個人情報の管理がうるさく言われるようになった昨今、現金会員名簿の管理などリスクとコストがかかるだけで、割に合わないのだ。現金客固定化のための方策はただひとつ、“エブリワン・エブリディ・ロープライス”なのだ。

 ハイオクレシオの維持も現金会員の固定化も、セルフ化によって客の志向に委ねるならば、莫大な宣伝費や販促費を投入せずとも、そしてスタッフの懸命な声かけなどなくても、ある程度達成できるものだということを、私達は認めるに至ったのである。振り返ってみれば、ずいぶんと遠回りして無駄な労力と資金をつぎ込んできたものだ。だが、その馬鹿馬鹿しくも虚しい努力を重ねてきた事が、ローコストセルフへ辿り着くために必要な“学習過程”であったとも言えるのだ。

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