セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.309『仕分け第2弾』

GS業界・セルフシステム

2010-05-31

 沖縄の米軍基地をめぐる騒動ですっかりかすんでしまった、第2回の事業仕分け。今回は38事業が廃止と判定されたが、その一つに石油情報センターが行なっているガソリンなどの石油製品の市況調査事業が含まれていた。1980年代後半から実施されている事業だが、仕分け人は、市況情報は別の手段でも入手可能になっていると指摘、「何のための、だれのための調査か」と疑問をぶつけた。エネ庁長官は「この実態調査は、原油急騰時での便乗値上げの監視、暫定税率の廃止と復活の混乱期には、マスコミ、国民に広く情報を提供して活用された」と存続を主張したが、意見は受け入れられず、約2億7,000万円の予算は削減となった。

 元売各社のセルフスタンドがしのぎを削る激戦地である日進市にいると、石油情報センターの発表するガソリン平均価格はあまりにも実態とかけ離れており、何の参考にもならないと感じていた。「便乗値上げの監視」などではなく、価格を高値誘導するためにアレンジされた情報ではないかと思えるほどだった。ちなみに、5月24日に調査された愛知県のレギュラーガソリンの平均価格は139.7円。日進市ではほとんどのGSが、133円以下になっていた。

 一方、暫定税率騒動のときに「国民に広く情報を提供」したのは、石油情報センターではなく、いまやGS業界で知らぬ人のない価格比較サイト「gogo.gs」(http://gogo.gs)であった。このサイトには、お役人がお役所仕事で観測した価格ではなく、投稿者からリアルタイムで送られてくるガソリン価格が、各市町村別という細かさで公開されている。おかげで、試し買いに行かなくても済むので重宝しているGS関係者も多いのではなかろうか。私もそのひとりだ。

 石油連盟の天坊明彦会長は、今回の事業廃止判定に対して「いらないとは到底思えない。信頼性があり、タイムリーな価格動向の調査は必要だ」と批判しているが、私に言わせれば、タイムリーでもなければ、信頼性があるとも思えない。そもそも、お上が血税を使ってまでガソリン価格の動向をチェックする必要があるのだろうか。「gogo.gs」のような民間会社の運営するサイトを活用すれば、十分ではないだろうか。いや、むしろこちらのほうがはるかに信頼性が高い。

 そうした情報からは、各地域での価格競争の有様が手に取るようにわかる。サインポールに“建値”を掲出しておけば石油情報センターの目はごまかせるかもしれないが、同業者や消費者の目ははるかに鋭い。水面下で、会員価格やプリカ価格、メールクーポンなどの二重、三重価格を打ち出してのせめぎ合いが繰り広げられているのをちゃんと理解し、対応しているのだ。石油連盟に加盟する元売各社がそれを知らぬはずはあるまい。それとも、あまりにリアルな情報なので、見たくないのだろうか。刺激のまったくない、石油情報センターの調査価格を見ているほうが安心なのだろうか。

 この業界では、同業他社の価格に鈍感な人は生き残ることができない。この業界はどこまで行っても価格しかないのである。ところで、6月からスタートするJXグループの新しい仕切り価格では、いわゆる“ブランド料”が4円にかさ上げされるとのことだが、マークでGSを選ぶ消費者がどれほどいるのだろうか。『ウチのマークを掲げれば、他社より4円高く売ることができます』と本気で信じている元売社員や系列店主はどれほどいるのだろうか─。

 折りしも、JXの新仕切スタートに冷や水をぶっかけるかのごとく、エクソンモービルは来月第一週の仕切り価格を大幅に値下げした。我々PBスタンドに関わりのある外販向け価格は一気に3.5円も下がった。エクソン恐るべし。『所詮、ガソリンは価格が唯一の決め手。ブクブクのコスト体質をブランド料でカバーしながら売ろうというなら売ってごらん』とでも言っているかのような、この時期の大幅値下げ。6月の「gogo.gs」は第一週から荒れそうな気配だ。わたしたちは、これまで以上に自分のテリトリーの価格をしっかり把握したうえで、市況に追随し得るだけの力、すなわち、仕入れる力とコスト競争力を培ってゆかねばなるまい。それを怠るGSは、早晩市場から“仕分け”されてしまうことだろう。

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