セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.313『伝家の宝刀』

GS業界・セルフシステム

2010-06-28

 6月27日付「日本経済新聞・電子版」によると、コンビニチェーン・サークルKサンクスは、東京と千葉で、「サンクス」マークのコンビニを約130店展開しているCVSベイエリアという大手フランチャイザーが、2012年の契約満了前にチェーン離脱を求めたことに対して、中途解約の権利はないとして東京地裁に提訴したとのことだ。

 CVSベイエリアは、22年間に渡りサンクスを運営してきたが、昨年2月から他チェーン加盟を目論んで期間途中での契約解除を申し出ていたらしい。今年の4月にCVSベイエリアが運営するビジネスホテルにローソンが入居したことで両者の関係は悪化、今回の事態に至ったのだという。

 サークルKサンクスとCVSベイエリアのあいだでいつから、どんなことで齟齬が生じるようになったのかはわからないが、首都圏に130ヶ所もの店舗網を有する大手フランチャザーに“マーク替え”されるのは、サークルKサンクスにとって痛手だろう。仮にガソリンスタンド業界でも、100店舗以上ものGSを持つ代理・特約店が、一度に転籍したら、結構な騒ぎになるのではなかろうか。

 それはともかく、転籍というのは、系列GSにとって“伝家の宝刀”ともいえるものだ。元売との価格交渉を優位に進めるために、いざとなればこれを抜くぞと柄に手をかけ威嚇する。すると、ひと昔前なら元売の支店長があわててやってきて、「まあまあ、お侍様、ここはひとつこのぐらいでご勘弁くださいませ」「うむ、そちがそこまで言うのなら仕方がない、今回は刀を収めよう」なんていう茶番劇が繰り広げられていたのだが、最近では、価格交渉のテーブルそのものが片付けられてしまい、見せ場がなくなってしまった。元売からは、FAXで価格が通知されるだけで、担当セールスマンを呼びつけても、「価格は本社で決められていますから」と木で鼻をくくったような返事。それならと、本社に乗り込み、「斯く成るうえは、某にも覚悟がござるぞ!」と大見得切ろうものなら、逆に「上等だ、抜けるものなら抜いてみやがれ!」と脅されて、すごすごと帰ってくるという有様。「抜くぞ」という奴に限って、実はそんな度胸なんぞありはしないことを元売はとうに見抜いているのだ。

 元売は、系列店のごね得を許さない、画一化された新仕切システムを推進している。仮に、本当に“宝刀”を抜いたとしても、それでうろたえるようなことはないだろう。それが、100ヶ所ものGSを所有している大手ディーラーであっても、定められたルールに則ったインセンティブ以上のものを出すことはないだろう。いや、出したくてもできないのだ。

 資源エネルギー庁の調査によれば、全国のGS数は2010年3月末現在 約4万400ヶ所で、一年前と比べて約1,700ヶ所減少した。伝家の宝刀がまだまだ威力を発揮していた15年前と比べると、2万ヶ所も減少した。エネオスとジョモの合併によって、その速度は一段と増してゆくことだろう。元売の直営店が減ってゆくのは一向に構わないが、系列の代理・特約店は、この淘汰の時代をどう生き抜くべきか─。

 私は、いまこそ“伝家の宝刀”を抜くべきだと思う。もちろんそれは、元売との条件闘争の具としてではなく、GSが自力で歩んでゆくためのアクションを起こすという意味においてである。結局、系列にとどまっている以上、どれだけ冷たくされても、過去の蜜月時代の経験が抜けきれず、「最後は助けてくれるのではなかろうか」という甘い幻想を抱いてしまう。錆びついた刀を思い切って抜き、退路を絶って進んでゆかなければ、来年のいまごろは、消滅したGS数の中に数えられているかもしれない。もちろん、肝心なことは“脱藩”することではなく、その後どのような進路を歩むかと言うことだ。それは、ローコスト・セルフ路線であるとの私の確信はますます強まっている。

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