セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.315『ムダ削減を急げ』

政治・経済

2010-07-12

 参議院選挙は与党・民主党の敗北に終わり、不安定な政治状況が続くこととなった。選挙直前は寝ていても勝てるほどの高い支持率を誇っていたが、菅首相が寝た子を起こすが如き消費税論議をぶちまくった結果、選挙期間中に支持率は急降下、まさかの敗北となった。

 一方、改選議席ゼロから10議席を獲得した「みんなの党」。「消費税を上げる前にやるべきことがあるはずだ、それは徹底したムダの削減であり議員や公務員のリストラの断行だ」との訴えが無党派層を中心に相当支持を集めたようだ。

 やはり、国民の多くは税金の無駄遣いをもっと徹底的にやってほしいと望んでいるのだろう。“ムダ削減”はいまや世の中のトレンドだ。再建中の日本航空も、一段のリストラを断行しない限りカネは貸せないと、銀行団から厳しい要求を突きつけられている。はじめにムダ削減ありき。これをやってからでないと、政府も企業も“次の一手”は打てない状態にあると言える。

 では、ムダとは何か。端的に言えば人件費である。天下りした役人が巨額の給与や退職金を取ることや、赤字決算の会社の経営者が何億円もの年俸を得ていることが、一般庶民にはやりきれない思いをさせているのだろう。

 GS業界においても人件費削減は喫緊の課題である。1998年にセルフ方式が認可されて以来、日本ではセルフはガソリンを安くたくさん売るためのシステムと位置付けられ、元売主導の店舗展開が行なわれてきた。その結果、大型店舗を維持するために多くの人員を配置しなければならず、これが日本のGS業界の経営環境を一段と悪化させてしまった。

 それでも、まだガソリンが売れているうちはよかったが、減販傾向が顕著となった近年、よほど強力な油外収益力を持っていない限り、幾人もの従業員を抱えて運営してゆくことは難しい状況となっている。相変わらず、元売や組合は、「“商売”は“笑売”」とか「“人材”を“人財”に」といった言葉遊びのセミナーを開催して、マンパワーの有効活用で収益をあげる道を模索するよう仕向けているが、現実問題としてもはやそんなことをやっている時間はないのではないか。

 JXグループの誕生と呼応して、元売各社の仕切り政策はより規則的となり、たくさん売りさえすればあとで何とかしてくれるという期待は抱くことができない。マーク替えをちらつかせても、相手は譲歩するどころか、返す刀でよりドラスティックな対応をしてくる有様。ぬるま湯は急速に沸騰しつつあり、ぐずぐずしていると“煮えガエル”となってしまう。

 従業員は生身の人間でありモノのように扱うわけには行かない。だからこそ、幾らかの退職金を払い、再就職を斡旋できるうちにこの問題に取り組まないと手遅れとなってしまう。1998年セルフ解禁以降GSが毎年1,000ヶ所以上のペースで減り続け、まもなく4万ヶ所を割り込もうとしているが、セルフスタンドの軒数はいまだ8千ヶ所、全体の2割程度にとどまっている。しかも、その大半は元売による元売のためのセルフであることを考えると、この業界のムダ削減に対する認識はまだまだ甘いと言わざるを得ない。

 ところで、日本国内では先月までで閉幕したかのように扱われているFIFAワールドカップだが、参議院選挙の大勢が決した数時間後にスペインとオランダによる決勝戦が行なわれていた。そこで繰り広げられた、両チームキーパーによるファインセーブの連発を目の当たりにし、失点を許さない堅い守りがなければ勝ち残れないのだなと思い知らされた。GS業界は、この先幾度もゴールを決められる状況ではない。ゴールキーパーを二人も三人も雇うこともできない。セルフ化による人件費抑制はまったなしのアジェンダ(政策課題)ではないか。

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