セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.318『春秋航空』

GS業界・セルフシステム

2010-08-02

 先月28日に、中国・春秋航空の茨城-上海便が就航した。まずはチャーター便としての運行だが、定期便になれば、一定期間より前に予約することなどを条件に、往復ナント4千円(!)程度の運賃にするとしている。その激安のカラクリを民放テレビ番組が紹介していたが、まず春秋航空の旅客機20機はすべて中古のうえ、会社が保有しているのは2機で、あとはすべてリースにして経費節減に努めている。さらに、1機あたりの乗客数を増やすため、座席の間隔を詰め、荷物の重量を制限している。そのため、座席がリクライニングできない機体もある。機内での食べ物・飲み物は(お湯や水さえ)すべて有料。また、搭乗員が髭剃りやプラモデルなどを機内で積極的に販売しているという。

 それだけではない。春秋航空では、「立ち乗り席」の開発までしており、安全性が確保され、当局からの認可が下りれば導入したいとしている。実現すれば、1機あたりの乗客数の大幅アップが見込まれ、航空運賃の価格破壊が一段と進むことになりそうだ。それにしても、飛行機で立ち乗りとは…。番組のコメンテーターが「ジェットコースターみたい」と評していたが、その大胆な発想力、コスト抑制をトコトン追及しようとの姿勢には感服する。

 これをGS経営に当てはめて考えると、フル・セルフを問わず、来店客にくつろいでもらおうなどと考えて、ゲストルームやインテリアにカネをかけるのは具の骨頂ということになる。種々の機能を搭載した計量機やPOSも不要であり、給油と精算さえできればそれで良し、できれば中古かリース機器とする。燃料タンクの有効活用という観点からすれば、ハイオクと軽油のいずれか、あるいは両方とも販売しないGSがあってもおかしくない。現金仕入れが原則のGS業界では、少々利益率が高くても掛売り客は有難くも何ともない。大口顧客ともなれば、貸倒れリスクが高まるだけだ。わずかばかりのディーゼル車や掛売り客のニーズに応えることで効率化が阻害されてはいないか。

 「ブランド料」などという訳のわからない名目で、同じ物をわざわざ4~5円も高く仕入れるなんぞ、熾烈なコスト競争にしのぎを削る航空会社の連中が見たら、「アホちゃうか」とツッコミを入れられそうだ。事実、全日空は2011年度に設立を計画している格安航空会社を、海外航空会社や投資ファンドなどから出資を仰ぎ、「ANA」ブランドとは一線を画す事にしているという。ブランドにとらわれていると思い切った営業戦略が取りにくいとの判断によるものだそうだが、とどのつまりブランドなんてものは余計なコストがかかるばかりで、足かせ以外の何物でもないということ。ましてや、石油元売のマークなんて何のご利益もないではないか。

 つまり、これまで常識と考えられてきたものをひとつひとつ精査し、「これって本当にウチの店になくちゃならないものなのか?」と疑問を呈することで、ムダを減らし、効率化のためのアイディアが生まれてくるというわけ。そう考えてゆけば、当然、現金化・PB化・セルフ化というかたちに収れんされてくるというわけだ。春秋航空の“国際線殴りこみ”のニュースは、販売競争イコール、コスト競争なのだということを改めて実感させるものだった。しかし、個人的には、もともと大のヒコーキ嫌いのうえに立ったままだなんて…どれだけ安くても絶対に乗らないと思う。

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