セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.320『もう、うんざりだ!』

社会・国際

2010-08-16

 今月9日、ニューヨークのケネディ国際空港で、機体の停止前に手荷物を取り出そうと立ち上がった男性乗客に、男性客室乗務員が着席を指示したところ、乗客は従わず、荷物が乗務員の頭に当たった。乗務員が客に謝罪を求めたところ、逆に悪態をつかれたため、機内アナウンスで「この仕事を28年やっているが、もう、うんざりだ!」と叫び、缶ビールを手に緊急脱出用滑り台を作動させ、機内から滑り降りてそのまま帰宅してしまった。搭乗員は器物損壊の容疑で逮捕されたが、「デイリー・ニューズ」紙は「どれだけ多くの人が、この一言を吐きたいだろう?彼は英雄だ」と報じた。同紙がホームページで「職場で『もう十分だ!』と叫びたいと思ったことがあるか」とアンケートをしたところ、回答の9割が「ある」だったという。

 GS経営者や従業員のみなさんも、「もう、うんざりだ」と叫びたくなったことが幾度もあったに違いない。お客様は「神様」ではない。神様は間違ったことや理不尽なことを求めたりはしない。ところが、客の中には「悪魔」のような人間もいる。10㍑給油しただけで「窓をふけ、灰皿洗え、タオル貸せ、空気圧見ろ」と無料奉仕を次々に要求する客、計量機にクルマをぶつけ、謝るどころか「お前たち(スタッフ)の誘導が悪いからだ」と逆ギレする客、給油後に支払いする壇になって「どこそこのガソリンスタンドは3円引きだった、ここでは引いてくれないのか」などとグダグダ文句を言ってくる客など、性格がゆがんでいるとしか言いようのない連中と相対するのは本当につらい。

 とはいえ、どんなにイヤな奴でも、数あるGSの中から自分の店を選んで給油してくれた“お客様”であることは紛れもない事実。怒りをこらえて、何を言われても笑顔でハイハイと応じなければ…と頭ではわかっているのだが、客であれば何をしようと許されるといわんばかりの振る舞いをされた日には、「もう、うんざりだ!」とプッツンしたくもなる。幸い、私はそうなる前に自分の店をセルフにした。接客によって感動や満足をもたらすという高邁な理想を追求することをあきらめたのである。「サービスステーション」であることやめて「給油所」となる道を選んだのである。

 日本民営鉄道協会などの調べによれば、2009年度、駅員や乗務員に対する暴力行為が869件発生していた。08年度に比べ117件の増加で、05年度に調査を開始して以来最多であったという。駅員への暴力は、土・日曜など週末の深夜に発生しやすく、加害者の60%近くが飲酒していたと報告されているので、やはり酔っ払った勢いでの暴力が中心なのだろう。

 GSには、酒に酔った客が来ることはほとんどないので、このデータをそのまま当てはめることはできないとしても、決して無関係な調査結果ではない。いま社会全体が言いようのない不安に包まれている。職場でも、学校でも、家庭でも、ムカつくことやイラつくことが増えている。しかも、気候のせいなのか、食い物のせいなのか、はたまたネットやテレビの影響か、老若男女を問わず人々はキレやすくなっている。ささいな理由で人を殴ったり殺したりする世の中だ。GSにおいても、客との接触は用心して当たらねばならない。そもそも、ガソリンを給油するだけのために、耐え難きを耐え、忍び難きを忍ぶ必要があるのか?「もう、うんざりだ!」

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