セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.329『フェニックス作戦』

社会・国際

2010-10-18

 「チ、チ、チ! レ、レ、レ! ロス・ミネロス・デ・チレ!」(チリの鉱山作業者、万歳!)─チリ・サンホセ鉱山の落盤事故で地下700メートルに取り残された33人の作業員全員が、69日ぶりに全員無事救出され、歓喜の声がこだました。

 今回の救出劇のニュースは、窮地に置かれた時に必要なものは何かということを、私たちに教えてくれたように思う。そのひとつはあきらめないということ。彼らの生存が地上で確認されたのは、事故から17日を経た後のことだった。その間の心理状態は想像を絶するものがある。水と食料が少なくなってゆく中で、絶望感で発狂してもおかしくない状況の中でも彼らは希望を捨てなかった。

 もうひとつは、団結するということ。作業員たちは、蒸し暑さと悪臭、薄い酸素、新たな崩落の不安などに耐えながら、各々に割り当てられた役割を果たし、集団生活の規律を一致協力して守り抜いた。過酷な状況の中で、励まし合い、慰め合いながら救出の日を待ち続けたのである。

 閉塞感漂うGS業界にいると、心が折れそうになることが少なからずある。しかし、自暴自棄になることなく、水や食料を節約しながら忍耐強く救助を待ち続けたチリの鉱山作業員たちのことを思うと、無駄遣いを慎み、あまり先のことまで心配せず、一日一日を乗り切ることに思いを向けてゆくことが大切なのだと改めて実感する

 確かに、長期的視野に立って経営を行なうことは大切なことだ。しかし、これだけ変化の激しい経済環境の中では、予見し得ない出来事がしばしば起こる。次の日には次の日の思い煩いがあるのだから、平衡の取れた感覚を保っていなければならない。ただし、これだけは言える。今後、元売からの“救援”は絶対にない。いま行なわれている支援も、やがて打ち切られるだろう。その意味では、系列にしがみついてるGSは、鉱山作業員よりも厳しい状況にあるのかもしれない。斯く成るうえは、GS経営者が系列の垣根を越えて団結する必要があるが、それはまったく期待できない。皆、自分が生き延びることで精一杯というのが業界の実情なのだ。

 作業員たちが乗り込んだ救出カプセル「フェニックス」の直径は54㌢だったそうだから、作業員たちは、救出に備えて減量を余儀なくされたという。やはり、人間も企業も、贅肉を付けていては生き延びることは難しい。先の見えない時代だからこそ、小さなコストで運営するローコスト・セルフへの転換が必要なのだ。

 チリの作業員から教えられたことがもうひとつある。それはユーモアの大切さだ。極度のストレスを経験しながらも、ビデオカメラの前では明るく振る舞い、ジョークを連発する彼らに、地上にいる人々のほうが勇気付けられたのではなかったか。2番目に救出されたオッサンは、救助隊員たちに「お土産を持ってきたよ」と、地下の石ころを配って笑わせていたし、最後に救出されたクルーリーダーは、「いや~70日間のシフトはきつかったぜ」とジョークを飛ばしていた。苦境にある時こそ楽観的な気持ちを持たねばならんのだ。

 世界中に興奮と感動をもたらしたこの救出作戦は、早速映画化の話が持ち上がっているのだとか。スピルバーグかロン・ハワードあたりが監督し、アントニオ・バンデラス、ベネチオ・デル・トロ、ハビエム・バルデム、ガエル・ガルシア・ベルナル等、ラテン系スター総出演の超大作というのはどうだろう。例の愛人役はジェニファー・ロペスで…。

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