セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.331『ストリッパーたち』

GS業界・セルフシステム

2010-11-01

 先週の日曜日のこと、愛知県日進市のGSのガソリン価格は、軒並み123円に値下がりした。「123」は店頭表示価格で、そこから会員価格だの、クレジット価格だので、実際は3円から5円引きで販売していることになる。自分の店に向かう車を走らせながら私は、「うへぇ~いよいよ120円割れか…いくらなんでも下げすぎだろうが」とつぶやいていた。

 120円ということは、消費税を除くと約114.3円だ。元売系列のGSにとってほとんど利益の出ない価格帯だ。業転ガソリンでもせいぜい5円程度で、キビシイ水準である。女性アイドルが売れなくなるとヌードになるように、GSも売れなくなってくると、すぐに“素っ裸”になるという習性がある。しかも、そういうことを一年間に幾度も繰り返しているので“またか”という感じだ。

 早速その日、店頭で軽トラに乗った年配の男性客から、「あっちのスタンドの方が安いぞ」と声をかけられた。“じゃあ、そっちで給油すればいいだろ”と言い返したい気持ちを抑えて「勉強しま~す」と答えたもの、「やれやれ、今回はどこまで下がるのかなぁ~、120円割れはついて行けねぇな~」と再びつぶやきながら家路についた。いま大流行のツイッターにでも書きこんでみようかとも思ったが、こんなGS経営者のつぶやき(というよりはぼやき)をフォローするモノ好きもいるまいと思い、やめた。

 ところがその翌日、つまり先週の月曜日、日進市内のGSの店頭価格は見事に133円に値上がりしていた。前日から実に10円の大幅値上げである。いわゆる市況是正というやつで、これまた業界の年中行事である。それにしても、前日の値下げは一体何だったのか。まさか、大きく飛び上がる前の前屈運動というわけではあるまい。そんな無茶苦茶な価格改定をしたら、来店客の不信感は高まり、固定化に汗をかいている店頭スタッフの苦労は無駄になってしまうではないか。

 時まさしく15年ぶりの円高の最中である。とりわけ“トヨタがくしゃみをすれば急性肺炎になってしまう”愛知県では、輸入品の値下がりとドラゴンズ応援セールが県民にとってはせめてもの救済なのだ。この時期に、100㌫輸入品のガソリンを一斉に10円も値上げをすることが、一般消費者の目にどれほど奇異に移り、ひいてはGS業界の評判をどれほど貶めることになるかが、元売も石商もGS経営者もまるでわかっていない。

 もちろん、現在の仕入れ価格と照らし合わせてみれば「133」は適正価格といえる。決して暴利を得ているわけではない。だが、先週から仕入れ価格が10円上がったわけではない。むしろ、猛暑が収まってきた10月上旬ごろから、ストリッパーのように、一枚また一枚と、ただでさえ薄い利益を自ら剥ぎ取っていったGS業界に非がある。業界新聞は、そのたびに『質販機運高まる!』などと報じるが、そのころにはもう値崩れが始まっているという有様だ。これはもう、ストリッパーというよりは拒食症患者に近い。食ったものを吐き出す病気にかかっているのだ。

 我がセルフスタンド日進東は、7月ごろからずっと122円から125円のあいだで販売してきた。比較的安定した業転市況と、ローコスト・セルフシステムがあまり大きな価格変動をせずに経営できた要因である。おかげで客の信頼も得られていると自負している。もちろん、今回の一斉値上げに便乗させてもらい130円で売れるものなら売りたいが、いまのところは様子見である。まあ、見ててごらんなさい、このコラムが油業報知新聞に掲載されるころには、日進市のみならず、愛知県のあっちこっちで、また品性下劣なストリップショーが繰り広げられているだろうから…。

コラム一覧へ戻る

ページトップへ