セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.332『水と油』

GS業界・セルフシステム

2010-11-08

 『JX日鉱日石エネルギーと子会社JOMOネットは1日、JOMOネットが運営する東京都・足立区のセルフガソリンスタンド「Value5環七江北店」で10月29~31日にガソリンとして給油し販売した一部が、実際は水だったと発表した。3日間で客10人に4~56リットル、計11件270リットルを販売していた。JX社によると、ガソリンスタンドの地下に埋設しているガソリンタンクが老朽化したため使用を中止し、内部に可燃性ガスがたまるのを防ぐため29日朝に水を入れたため、タンクにつながる地上の給油機4機のうち2機から、ガソリンではなく水が出る状態になっていた。31日夕方以降、利用客5人から「給油した車の調子がおかしい」と連絡があり、誤りに気づいた。1日夜までに客8人と連絡が取れたが、2人が判明しておらず、同社は「最悪の場合、エンジンが止まる恐れがある」と注意を呼びかけている』─11月1日付「朝日新聞」。

 まったくもってお粗末な話。ひと昔前には、PBのガソリンスタンドは、安売りするために水を混ぜているなんて風評を同業他社に流されたりしたものだが、天下のJXの子会社が“真水”を販売したなんて笑ってしまう。しばらくの間は、JX系のGSで水抜き剤を勧めたら、客から「水入れといて、水抜くとはどういうことやねん!」と突っ込みを入れられそうだ。

 ところで、性質が合わないことや、調和しないことを「水と油」と言うけれど、実際には水と油は混ざるらしい。愛知県・岡崎市の「伊藤レーシング・サービス」というレース車両製造の会社が、3年前にガソリンと水を特殊なミキサーによって理想的な状態に混合し、実際に自動車を走行させるWCCSというシステムを開発したとのことだ。しかも、水を混合させたガソリンのほうがエンジン出力が向上したというのだ。考えてみれば、水は水素と酸素でできているのだから、混ぜ方次第では燃焼効率を上げる触媒の役割を果たしたとしても不思議ではない。「伊藤レーシング・サービス」では、このシステムの製品化・量産化を実現すべく、鋭意研究中とのことだ。

 現在、名古屋市の水道水1㍑の価格は0.1円。仮に130円のガソリン20㍑の10㌫を水道水で賄うと、約260円安くなる。1㍑に換算すると約117円。混合率20㌫だと約104円まで下げることができる。原油価格の高騰に悩まされている消費者にとっては、まさに夢の技術といえる。

 ところで、GS業界にとって最大の脅威である電気自動車を普及させようとすれば、同時並行で発電所も建設してゆかなければならない。当然それらは、温暖化対策の観点から、火力発電所ではなくて、原子力発電所ということになる。ところが、原発には膨大な量の冷却水が必要となる。原発先進国フランスでは、毎年190億立法㍍、東京ドーム1万5千個分以上の水が必要なのだそうだ。ここでもやはり水が必要なのである。それならば、この際、官民一体となっていま紹介したようなガソリンと水の混合システムを本腰を入れて開発してはどうだろうか。燃料電池や太陽光熱などで自動車を走らせることができる日が来るまでの“つなぎ”の技術として有望ではないかと思う。

 もし、そのシステムを自動車一台一台に取り付けることが難しいというのなら、GSのタンクに取り付けるようにすればよい。販売価格を大幅に下げることができるし、環境面においても一定の貢献を果たすことができる。そうなればGS店頭で「“水割り”でよろしいですか?」と声かけするかも…。

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