セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.339『ウサギとカメ』

GS業界・セルフシステム

2011-01-03

 昨年末に,某元売販社に勤めていたという方にお会いして,雑談する機会があった。「どうですか,儲かっているんですか?」と問うと,「全然。親会社(元売)の赤字補填がなければとてもやってゆける状態じゃあありません」との答えが返ってきた。やっぱり…。

 「元売販社なんて,もともと計画的に事業展開してきたわけではなく,潰れた特約店の店舗を緊急措置的に次々と傘下に加えて出来た,いわば“寄せ集め”です。それでも,セルフ化すれば販売量が倍々ゲームで伸びていった時代は何とか格好が付いていたんですが,ここへ来て業績はかなり悪くなっています」

 「でも,某販社さんは,この界隈でも,新設のセルフスタンドを矢継ぎ早に3ヶ所も作られたから“うまく行っているのかなぁ”と思ってましたよ」

 「開発部の連中は,スタンド作らないと仕事にならないから,無闇に作って販社に運営させる。販促部は手間隙かけてコストのかかるキャンペーンを考えついては持ってくる。我々の意見なんか聞きゃあしない。…ったく,アホですよ,奴ら。結果的に,販社の赤字は膨らむ一方,という訳です」

 私が,「なんで元売は,直営から撤退しないんですかねぇ」と水を向けると,「メンツですね」と某氏。「失敗を認め,戦線を縮小させるということは,なかなか勇気の要ることですよ。だれかが責任取らなきゃいけなくなるしね。それに“量より質”と公言しながらも,まだまだ販売シェアを落とすことに抵抗を感じているんですよ。結局,どの元売も直営店網を広げすぎたことが間違いだったんです。セルフの台頭で,直営店の管理がしやすくなったものだから,もう特約店の力を借りなくてもいいんだと錯覚しちゃったんですね」─。

 近年,セルフスタンドの建設計画がめっきり少なくなり,一方で,閉鎖するセルフスタンドが増加していることが,某氏の言葉を裏付けている。元売販社のセルフスタンドは,この十数年,市場を席巻した。セルフ化とあいまって,それまでPBスタンドのお家芸だった安売り看板商法を積極的に展開,なかにはPB店主たちから不当廉売で訴えられるGSまで現われた。

 私はずっと“セルフは量販の道具ではない。コスト抑制のための手段なのだ”と訴え続けてきたが,元売販社の猛進撃に前には“貧乏人のひがみ”にしか聞こえなかったのかもしれない。だが,国内市場の先細りが顕著となり,成長が望めなくなったこの数年,相対的に直営店網のコスト負担が重くのしかかってきた。

 イソップの寓話「ウサギとカメ」に出てくるウサギは,まさに脱兎の如くスタートダッシュしたが,自信過剰が災いし,カメに追い抜かれてしまった。元売販社をウサギに例えれば,初期の成功に酔いしれ突っ走った結果,息切れしてきたというのが実情ではなかろうか。元売販社に限らず,相変わらず,ガソリンも,オイルも,洗車も,車検も…と,「二兎」どころか,三兎も四兎も追いかけようとするGS経営者は多いが,果たしてどこまで続けられることか。

 いずれにせよ, 今年も相当軒数のGSが閉鎖されることになろう。その中にはセルフスタンドがかつてないほど含まれているに違いない。長く険しい道のりはまだまだ続くわけだから,私のような零細GS経営者は,体力を消耗しないよう,ウサギ年の今年も,カメの如くローコスト歩行で前進あるのみだ。

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