セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.341『優先順位』

オピニオン

2011-01-17

 インターネットの無料ゲームサイトの一つに、「ガソリンスタンド経営シミュレーション」 (http://www.wowgame.jp/game_html/539.html) というのを見つけたので、暇つぶしにやってみた。次々に来店する客を計量機に誘導し、給油・精算を効率よく行なうという簡単なゲームなのだが、モタモタして待たされると、客はだんだんイライラした顔になり、最悪の場合怒って帰って行ってしまう。ゲームとはいえ、GS経営者としてはなかなか切ない状況である。

 実際、GSに限らず、作業や案内の手際が悪いスタッフに当たると悲惨である。このあいだも、ある洋菓子店でケーキを買おうとして入ったら、一足早く入った客の注文を聞いているところだった。可愛らしい女の子が一人で応対していたが、この娘がよく言えば丁寧、悪く言えば馬鹿丁寧な接客で、このまま永遠に続くのではないかとさえ感じられた。

 しかし、それだけならまだ辛抱できる話である。待っている間ずっと、ガラス張りになっている奥の厨房では二人のスタッフが休憩しながら談笑中、横の喫茶コーナーの店員は伝票の整理のようなことをしていて知らん顔という状況を観察するに及んで、私はもう二度とここのスイーツを食することはすまいとの誓いを立てつつ憤然と店を出たのであった。短気な奴と笑いたければ笑っていただいて結構だ。

 客にとっては、待たされることではなく、どのような待たされ方をするかが問題なのだと思う。例えば、東京ディズニーランドでは、人々が人気アトラクションの順番を2時間でも3時間でも辛抱強く待っている。それは待たされることを、望んではいないが、納得しているからだ。言い換えれば、TDLでは公平かつ組織的に物事が行なわれていると信頼されているので、皆安心して待つことができるのだ。(それでも私はうんざりだが…)

 また、ある石油元売は、特約店研修の講師に老舗旅館の女将さんを招き、“おもてなしの精神”について講演してもらったとのことだが、一泊ウン万円も頂戴する旅館の“精神”をGSに持ち込もうというのは土台無理な話である。「GSは行きたくて行く場所にあらず」(字あまり)という哲学の持ち主である私は、個々のスタッフの技量や資質に大きく依存する「接客」によってではなく、24時間365日均一なサービスを提供できる「システム」によって、最大公約数の顧客満足をもたらすことができると信じている。その「システム」とは、言うまでもなく客に自己責任において給油をしてもらうセルフシステムのことだ。

 もっとも、セルフスタンドの中にも、油外商品販売を目的としたスタッフを「アテンダー」として店頭に配置しているところもある。しかし、よく見かける光景なのだが、客が寒い中給油しているのを目の前にしながら、スタッフが“それはワタシの仕事ではありません”とばかりにつっ立っているようなことがあれば、客は、このあいだ私が洋菓子店で経験したような苛立ちを感じることだろう。要は優先順位がわかっていないのだ。

 例えば、バケツの中にこぶし大ほどの大きさの石ころ幾つかとバケツ半分程度の量の砂を入れるとしよう。先に石ころを入れてから砂を入れるなら、両方ともバケツの中に収まるが、先に砂を入れると石ころをすべて入れることができなくなってしまう場合がある。このことは、優先順位を間違えると、成果に優劣が生じることを教えている。GS、とりわけセルフスタンドに客が求めていること、すなわち最優先のことは、速く、安く、安全に給油することであり、それよりも油外商品を売ることや、メンバーズカードを勧めることを優先させると、客は不快に感じるかもしれない。GSにおいて、客を待たせることがいかに不利益な事かを理解したければ、冒頭で紹介した無料ゲームで遊んで見ることをお勧めする。

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