セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.345『フェアプレー』

エンタメ・スポーツ

2011-02-14

 エジプトのムバラク政権が崩壊した。独裁政権を打ち倒し歓喜に沸く人々の様子が報じられているが,問題はこれからだ。もし,イスラム原理主義勢力がエジプトを支配することになれば,アメリカやイスラエルとの関係は一気に緊張化し,下手をすると第5次中東戦争勃発ということにもなりかねない。そうなれば石油価格は…ああ,想像しただけで恐ろしい!

 ところで,日本人になじみの深いエジプト人といえば,モハメド・ラシュワン氏の名前を挙げる人が多いのではなかろうか。1984年のロサンゼルス五輪の男子柔道・無差別級の銀メダリスト,と言うより,日本の山下泰裕に金メダルを譲った男として日本人の記憶にとどめられている。準決勝戦で右足を痛め,立っているのがやっとの状態の山下に対し,ラシュワンの得意技は右払い腰。ところがラシュワンは,山下の右足を一度も攻めることなく,不得意な左払い腰を仕掛けたところを逆に山下に潰され,横四方固めで敗れた。私は,“これぞスポーツマンシップ”と呼ぶにふさわしいラシュワンの戦いぶりに大いに感動した。

 この試合を見て,勝てる試合だったのにわざと負けたと憤る人がいるとすれば,それはスポーツマンシップというものをまったく理解していない人だろう。スポーツでは,勝利よりも尊いものがある。ゆえに私は,横綱のくせにけたぐりを繰り出す朝青龍の下品極まりない相撲が大嫌いだった。ところが,相撲界には白星を売り買いする八百長が横行していたことが明らかとなり,勝ち負けを超えた美意識といったものは吹っ飛んでしまい,相撲はもはやスポーツと呼ぶのもはばかられるような存在になってしまった。

 さて,我がGS業界はといえば,これはもうあきれるほどのガチンコ勝負。少しは相撲界に倣って,みんなが食いつないでゆけるように白星を分け合えばよさそうなものだが,年中ノーガードの殴り合いのような価格競争を繰り広げている。かつては石商組合が「中盆」的な役割を果たしていたが,いまやすっかり無力化してしまっている。

 自由競争に異議を唱えるつもりはないが,それならそれでフェアに行なうべきだ。例えば元売販社の度を過ぎた安売りは,どう考えたってフェアじゃない。自社の系列店への卸価格よりも安い価格でガソリンを販売するなんて,自由競争の名を借りたイジメだ。そのような採算を考慮に入れない量販政策が,GS業界をボロボロにしてきたのだ。

 また,元売が恒例行事のように市中買いをして業転価格を操作するのもいい加減やめてもらいたい。そんな姑息な手を使わず,作ったガソリンはジャブジャブと市場に流し,自社のブランド力で清々堂々とPBスタンドに相対すればよいではないか。ついでに言わせてもらえば,毎年決まったように起きる元売各社のリファイナリーのトラブルも,価格操作のための“八百長”じゃないかと勘繰りたくなる。

 石商の中には,「PBにもブランド料を」なんて訳の判らないことを提唱している組合もあるらしい。自分たちの無策を棚上げして,ルールを都合よく変えてしまおうなんて,スポーツマンシップの欠片もない卑しい考えだ。もっとも,生き馬の目を抜くようなビジネスの世界に,スポーツマンシップを求めるほうが土台無理なのかもしれない。こうなれば,私のようなGS経営者は,とりあえず「強く当たって,あとは流れで少しは踏ん張って」…。

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