セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.347『緊急談話』

GS業界・セルフシステム

2011-02-28

 地中海湾岸諸国で燃え広がっている民主化運動は,原油価格の暴騰を引き起こし,わたしたちもその行方を固唾を呑んで見守っている状況である。これを受けて,2月24日には全石連の関正夫会長が“緊急談話”を発表した。その内容は,とにかくこれまで経験したことのない危機的な状況にあるので,「わが石油業界は全国をネットした石油サプライチェーンの堅持に向け,精製・販売共に従来の旧態依然とした量販志向による価格競争から速やかに脱却することが求められている」というものだ。

 「量販志向による価格競争からの脱却」─これまでこの類の言葉をどれほど見聞きしたことだろう。いつまで経っても実現しないまま,近年は節約志向やエコカーの普及によって,需要が急速に縮小している。灯油の販売量はピーク時の半分ぐらいになってしまっている。いまから10年後にはガソリンの消費は30㌫も減ってしまうと言われている。こんな状況に置かれているのに,いまだに「価格競争からの脱却」もままならないGS業界は,集団自決を図っているとしか思えない。

 全石連がこのところ好んで標榜する「サプライチェーンの堅持」も,すでに崩壊が進んでいる。「価格競争からの脱却」にまじめに取り組んでこなかったツケが,まず地方市町村のガソリンスタンドの過疎化という社会問題を生じさせている。タンクの老朽化や後継者問題など様々な理由があってのことだが,やはり一番の原因は,ガソリンがあまりにも儲からないからだ。いまや過当競争の代名詞のような業界になってしまい,将来への展望がまったく開けない。こんな業界にだれがした!と言いたい。

 それは量販志向を改めようとしない元売のせいだ,と非難するのはたやすい。しかし,その元売の政策に乗っかって“とにかく売ろう,売ればあしたが見えてくる”とばかりに,価格競争を繰り広げてきたのは,ほかでもない,あまたのGS経営者たちではなかったか。とりわけ,1998年にセルフ販売が認められるようになってからの販売競争は,GSの経営体力を一段と消耗させてしまった。月間1千㌔を販売した超ド級のセルフスタンドさえ,閉鎖に追い込まれたとのニュースを聞くと,この業界が相当ヤバイ状況に追い込まれていると感じる。

 悲観的なことばかり言っていないで,何か打開策を考えろよと言われれば,まさに全石連会長が仰せのとおり,いまこそ「量販志向による価格競争から脱却」することだ。すっかり疑心暗鬼が蔓延しているこの業界で,そんなことができるのか。私は各地域で市況を安定化させるためのリーディングカンパニーを作ることを提言したい。例えば,関会長の出身会社である関彰商事グループがEM量販会社・シンエネと手を結んで市況形成を図れば,茨城県の市況はかなり安定するのではなかろうか。あるいは,愛知県には,宇佐美鉱油と一光というフリート大手が共に本社を置いているが,この両雄がエリア毎に提携を進めることで,無益な販売競争をせずに済む。つまり,幕府(元売や官庁)の主導によってではなく,各藩(有力ディーラー)の主導で業界の秩序を作り変えてゆこうという,GS版「薩長連合」というわけだ。

 何を言い出すかと思えば,そんな出来もしないことを…とあざけられるのは承知のうえで勝手なことを書いたが,それぐらいのことでもしないと,関会長の言う「過去に例を見ない不透明な」時代には対処できないのではないだろうか。

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