セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.351『安売りしている場合か!?』

GS業界・セルフシステム

2011-03-28

 東北・関東大震災の被災者の方々がいま直面しておられる苦難,これから増し加わるであろう不安を我が身に置き換えると,まさに茫然自失となる。地震と津波により,生活の基盤を失ったうえ,いまもなおくすぶり続ける放射能の恐怖に怯える日々。1979年に米国で起きたスリーマイル島の原発事故では放射能の除去に12年の歳月と790億円を要した。今回の福島原発の事故は,その時と同じ“レベル 5”の災害なのだという。

 地球温暖化を抑制しながら経済成長を維持するためには,“クリーンエネルギー”である原子力発電を核としたエネルギー供給が絶対必須の条件だったが,今回の事故によって日本のみならず世界中の原発建設にブレーキがかかりそうだ。不足分の電力を風力や太陽光で賄うのはとても無理と言うことになれば,また化石燃料に回帰せざるを得ないのか。そうなれば地球温暖化は加速し,南極の氷がどんどん溶解する。溶け出した大量の水が海流を変え,それによってストレスを受けた海底の断層に新たな変化が生じ…というわけで,人類がこれ以上経済活動を続けるなら,地震と津波による被害はこれからも増え続けるだろう。

 そんな心配はさておき,とりあえずは,被災地で起きている窮状,とりわけ同業者の状況に思いを致すきょうこのごろだ。東北・北関東での供給不足は,徐々に解消されているというが,まだまだ売切れ御免の不安定な営業体制のGSが多く,スタンドには連日客が長蛇の列をなしているという。台数限定,数量限定での給油が続いているが,殺気立った客に殴られるGSスタッフもいるという。タンクローリーの運転手も,燃料を積載しても表示板は「空荷」として配送するという。乗車したらすぐドアロック。ほとんど現金輸送車を運転するような緊張感だという。

 資源エネルギー庁は,GSが営業していない被災地で,空き地にドラム缶とポンプを設置して仮設のGSを稼動させる計画を今月26日に発表した。なお,「危険物の取扱責任者については,避難所など被災地周辺で探す」との事だ。ガソリンは屋外貯蔵禁止ではなかったのか? まさか電動ポンプで汲むんじゃないでしょうね。緊急事態だから超法規的措置も仕方がないという一方で,「危険物の取扱責任者」を探しているってどういう事? そんな恐ろしい施設の責任者をだれが引き受けるというんだろう…。

 石油製品の供給は,そう遠くない将来正常化するだろう。だが,そのあとはどうか。クルマも船も家も無くなった地域に燃料油の消費が見込めるはずもなく,首都圏の計画停電も消費マインドにマイナス圧力をもたらすことは必至となれば,今後,ケタ違いの大減販が待ち受けていると覚悟した方が良い。そんな状況になってもなお,日本のGSは,ガソリンを水より安い価格で売り続けるのだろうか。

 ガソリン価格サイト「gogo-gs」を見ると,東北地方でも,系列大手による値引き合戦が早くも始まっている様子が伺える。日本が地震で揺れているあいだも,中東情勢はますます緊迫し,原油価格はいつのまにやら100㌦を超えているというのに。今夜も,ガソリンや灯油を一滴も無駄にすまいと困窮に耐えている人々がいるというのに。そして,被災地であるなしに関わらず,日本中が,「ガソリンは貴重品なのだ」ということをいや応いなく再認識させられているにもかかわらず─。「ドラム缶スタンド」も結構だが,エネ庁や全石連には,今度こそ,GS業界の体質を根本から立て直す覚悟が必要だと思うのだが…。

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