セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.353『引き金に指をかけたが…』

政治・経済

2011-04-11

 ガソリンの全国平均価格が3ヶ月以上160円/㍑を超えた場合,ガソリン税の暫定税率分の課税を停止し,約25円/㍑を値下げする揮発油税の特例措置,いわゆる「トリガー条項」について,政府・民主党内では廃止する意向が大勢を占めているとのことだ。昨年4月に,暫定税率廃止の公約撤回と引き替えに成立させた法案だが,原油価格の高騰が続き,現実味を帯びてきたとたん,一度も適用されないうちに廃止論が浮上したというわけだ。

 さもあらん。10兆円とも言われる震災復興予算を捻出するためには増税もやむなしとのムードが広がっている中で, もし実施されれば,国と地方をあわせて 3ヶ月で約 4,500億円の税収減となる措置が,「大震災の財源を必要としている事態に適切なのかどうか」(民主党・岡田幹事長)ということになれば,やむを得ない。

 私は,この法律が成立した日から,その引き金(トリガー)が引かれる日を期待していた。仮にガソリン価格が3ヶ月連続で160円を超えれば,暫定税率が一時停止となり135円に値下がりする。そして,3ヶ月連続で価格が130円を下回るまでは解除されない。この135円から130円までの幅の中で,GS業界の将来を左右する判断がなされることになっただろう。

 トリガー法発動後,仕入れ価格が下がり始めた時,相変わらずの価格競争を繰り広げて,すぐに解除価格まで下がってしまうか,せっかく税金が軽くなったのだから,発動価格圏内を維持しつつ,利益回復の財源として活用するか─つまり,GS業界が利口か馬鹿かが試される「社会実験」がなされることになる。日ごろガソリンにかかる税金が高すぎる,と不満を訴えている元売の方々が,よもやそこで国の要請を受け入れて,直営販社に安売りをさせて税率復活を誘導するようなことはあるまい。

 いや,待てよ。そう言えば,JXは今週も卸価格の据置きを決めたが,これってもしかしたら市場価格の160円越えを抑えたいという国の意向を受けて,あえてコスト上昇分をかぶっているのかもしれない。一方のEMが“素直に”1.5円の値上げをしているのと比べると,そんな勘繰りをしたくもなる。今回の据置きを,『震災直後にあれだけ供給に混乱をきたしたのだから,そのお詫びと,復興を支援しようとの心意気を示したのだろう。やっぱり外資系とは違う。さすがは日の丸メジャー!』と,手放しでほめていいものかどうか。

 今回の震災で日本の原発の安全性と危機管理の脆弱性が露呈したことにより,まだしばらくは電力供給を化石燃料に依存せざるをえないだろうとの思惑が,原油価格の値上がりを一段と後押しすると見られている。一方で,国内で火力発電所がフル稼働となれば,主燃料の重油の消費量が増える。しかし,原油から精製される重油は20㌫程度だから,連産品として精製されるガソリン(40㌫)はジャブジャブとなるので,価格の下落に歯止めがかからなくなる…という観測もある。

 いずれにせよ,今回の震災で,日本のエネルギー政策はガラガラポンの状態となり,先行きがまったく見えなくなってしまった。もっとも,被災地のGS経営者の方々は,きょう一日をどうやって乗り切るかで精一杯であるに違いない。震災から1ヶ月が経過した。放射能や余震への不安が続く中での懸命の復旧作業が続いているが,復興までの道のりは遠く険しい。せめて,エネルギー供給だけでも,一刻も早く数量・価格ともに安定させて欲しいと切に願う。

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