セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.357『悪質業者』

社会・国際

2011-05-09

 金沢市に本社を置く焼肉チェーン店「焼肉酒家えびす」の生肉(ユッケ)による集団食中毒で,6歳の男児をはじめ計4人が亡くなった。チェーン店を経営するフーズフォーラス社は,一皿100円という低価格路線で店舗を拡大してきた新興企業で,北陸地方を地盤に計20店舗を展開していたが,以前から同業者のあいだでは「衛生管理の徹底などコストをかけたら,ユッケを280円で販売はできない」などとうわさされていたという。低価格競争に勝ち抜き業容を拡大せんがために,「安全」にかけるコストまで削ってしまったことが,取り返しのつかない事態を招いてしまった。

 私たちの業界も,これを対岸の火事ととらえるのではなく,教訓としたい。無駄なコストは徹底的に削る一方で,お客様が安全に給油するための設備の点検・更新は怠ってはならない。幸い,私の店は,2000年の開所以来,一度も事故を起こすことなく今日まで営業を続けているが,そのようにして築き上げてきた信用も,一度の不祥事ですべて崩れ去ってしまうということを肝に銘じておかねばならない。

 「焼肉酒家えびす」については,「人生が変わる1分間の深イイ話」という日本テレビ系のバラエティ番組が,食中毒事件が起きる直前に取り上げ,「焼肉1皿100円」の安さと人気の秘密を探るとして,「人気の種類を大量に仕入れることで激安価格を実現」,「高級店並みの接客」などと称賛していたらしい。番組内でユッケのことは取り上げられなかったが,ネット上では「この番組が放映されなければ犠牲者を出さずに済んだのでは」,「日テレが知らんぷりしているのはおかしくないか」などの批判があがっている。激安価格のウラのカラクリを見抜けなかったと言うことか。

 また先週,フジテレビの情報番組「とくダネ!」で,パーソナリティの小倉智昭氏(自身も焼肉店を経営)が,「焼肉食べて中毒で死ぬ人よりも,フグの毒で死んじゃう人の方が僕は年間にしたら多いんじゃないかって思う。それだったらフグなんかも全部やめなきゃいけない…」と,フーズ社を擁護するかのような発言したために,やはりネット上で非難されている。確かに小倉氏のコメントは,論議のすり替えであり,風評被害が自分の店にも及ぶのを恐れての発言だと疑われても仕方がない。ちなみに小倉氏の店のユッケは一皿850円だとか。

 今回の事件は,フーズ社が衛生管理を過度に簡略化させたことや,卸業者がフーズ社に加熱用の肉を「生食用」として卸していたことなど,利益を優先するあまり生じた人為的な事柄が原因であり,狂牛病や口蹄疫のような災厄とは根本的に異なる問題だ。ちゃんとした肉を仕入れ,ちゃんと調理している焼肉店は何も恐れることはない。

 同様に,一部の悪質なPBスタンドによる粗悪ガソリンが被害をもたらしたとしても,我々真面目なPBスタンドは何ら動じることはない。ちゃんとした商品を仕入れ,PBイジメと思えるほど頻繁になされる当局の製品分析にもきちんと適合することで,系列店と同等,いや,それ以上に安心・安全な商品をお客様に提供しているとの自負がある。また,時折起きる混油騒動や爆発事故のたびに,セルフ,とりわけローコスト・セルフを危険視する向きもあるが,これも的外れな論議で,ローコストはローリスクにつながるということがわかっていない連中の言いがかりだ。いずれにせよ,どの業界にもワルやアホがいて,業界に被害をもたらす事件を引き起こすということ。真面目に商売をしている同業者には甚だ迷惑な話である。

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