セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.358『塗装工事中』

GS業界・セルフシステム

2011-05-16

 コメディ映画の傑作「お熱いのがお好き」(’59・米)。トニー・カーチス扮する口八丁のプレイボーイは,ヒロインの歌手,マリリン・モンローをナンパしようと,自分はシェル石油の御曹司だとウソをつく。浜辺で貝がらを拾いながら,「ボクは貝がらが好きでね…だってボクの会社と同じ名前なんだもん」。かくしてマリリンはトニーに夢中になってしまう。

 映画は息もつかせぬテンポで進み,哀れトニーに逃げられ,玉の輿の夢がついえたと嘆くマリリンを,トニーの相棒ジャック・レモンが,「彼のことは忘れたら」と優しく慰める。するとマリリン,「そんなの無理よ。だって,シェルのスタンドを見るたびに彼のことを思い出しちゃうもの」─。映画ファンならだれでも知っている名セリフだ。

 いまから50年以上も前の映画だが,恐らく当時のシェル石油にとって,計り知れない宣伝効果があったに違いない。シェルに限らず,石油元売各社は,マークの使用料を「ブランド料」と称して仕入れ価格に上乗せするほど,そのバリュー効果に自信を持っているようだが,それほどの“ご利益”があるかどうか。少なくとも,近年,増加の一途をたどる無印スタンドへの転籍組のみなさんは,かつて自分が所属していた元売のマークを見るたびに,苦々しい体験を「思い出しちゃう」のではなかろうか。

 それはともかく,晴れて(?) 無印スタンドとなった経営者は,白く塗りつぶされた自分のGSに,どんな新しい色や模様を描くかいろいろと思いめぐらすのだが,気をつけないと,これが罠となる。「ああもしたい,こうもしたい」と夢を膨らませるうちに,みるみるコストがかさんでくる。何のために無印の道を選んだのか。高コストの元売系列から離脱し,自己責任の下でローコスト経営に転換したのではなかったかのか。その原点に立てば,白い防火塀に,せいぜい一本か二本のラインを引くだけで十分だという結論に達するだろう。

 マークが取り外されたサインポールに,元売マークと遜色のないオリジナルブランドを掲げたいとの誘惑にもご用心。どんなにカッコイイマークを取り付けたところで,所詮,元売マークに太刀打ちできるわけがない。それに,自分が日ごろよく行くGSのマークが「エッソ」なのか「エネオス」なのか見分けがついている消費者なんぞほとんどいないと思う。消費者の関心はただひとつ,価格看板の数字だけだ。

 元売系列の下では,何年かに一度,GSをきれいに塗り直してもらえる。高いガソリンを仕入れているんだから,それぐらいやってくれても当然とは思うが,我々無印スタンドは,自腹を切ってそうした営繕を行なわねばならない。私のスタンドも,ホームセンターで塗料や道具を買ってきて,自分たちで塗っていたのだが,さすがに10年以上も経つと,上塗りしても,下の層の塗料がボロボロと剥げ落ちてきてしまう。そこで今回は,近所の工務店にお願いして,防火塀とアイランドの支柱を塗りなおしてもらうことにした。

 やっぱりプロの仕事はきれいで速い!速乾性の塗料によって,防火塀や建屋壁はみるみるまぶしい白さを取り戻し,そこにさわやかな水色のラインが引かれていった。約30万円の出費だが,仕方ない。あんまりしみったれた店舗では,仮に映画に登場したとしても,ホラー映画の舞台になってしまうかもしれないので…。

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