セルフ給油システム・周辺機器 販売・施工
和田商事株式会社

セルフ雑記帳

和田 信治

vol.359『捨てる神あれば…』

GS業界・セルフシステム

2011-05-23

 このあいだ,ある地方都市の建設会社の経営者が訪ねてこられた。閉鎖されている地元のセルフスタンドを買い取って運営したいので,是非相談に乗ってほしいとのことだった。てっきり,セルフシステムについて見学・調査に来られたのかと思いきや,とにかくGS経営はズブの素人で,ガソリンはどこからどうやって仕入れたらよいのか,1リットルのマージンはどれぐらいが妥当なのかといったGS経営のイロハのようなことを次々と尋ねられ,ご教授した次第である。

 その一方で,その会社は建設業のほかに,ゲームセンターやゴルフ練習場,スーパー銭湯などの運営も行なっているため,プリペイドカードによる精算方式や,ネットワークカメラの活用による監視体制など,セルフシステムの基部となる点については熟知しておられ,すいすいと理解された。おりしも,現在愛知県内でリニューアルオープンのために改装工事を行なっているセルフスタンドに案内したのだが,帰途につくころには,「和田さん,GS経営はそんなに難しいことではなさそうですね。帰ったら早速,行動を起こしたいと思います」と言っておられた。

 翌日には,仕入先を紹介してほしいとの電話をいただき,取引のある業転商社を三社ほどご紹介させていただいたのだが,そのまた翌日に,「買い取ろうとしたGSを,タッチの差で別の会社にさらわれてしまった」と電話してこられ,急転直下,計画はおじゃんとなった。しかし,その社長さんはその際にも,「GS経営は魅力的な商売なので,いい物件があればぜひやってみたい。その時には,また力を貸してください」と意欲を示しておられた。

 全国の閉鎖GSの件数は,昨年度も千ヶ所を超え,これで14年連続の大台突破となった。しかし,一方で,「GS経営がやりたいのだが,どこかにいい物件はないか」との問い合わせが,一昨年あたりから私のところにもちょくちょく持ち込まれるようになった。まさに“捨てる神あれば,拾う神あり”である。死んでいた,あるいは死にかけていたGSが蘇生してゆくことは,業界人として喜ばしいことなので,可能な限りお手伝いしたいと思っている。

 半年ほど前にも,廃業を決意したフルサービスのGS経営者が,自社店舗を別の運営者に賃貸したいとの話が進み,セルフスタンドに改造するためのプランニングの依頼を受けた。予算も提示し,じゃあ,現地で打ち合わせをしましょうかという段になって,“捨てる”はずだった前経営者が体裁を気にしたのか,未練が沸いたのか,賃貸条件や運営方法に注文を付け出し,これまた頓挫してしまった。

 貸し手と借り手,売り手と買い手の思惑がうまくマッチしないと,再生可能なGSも,結局コンビニか駐車場になってしまう。残念なことだ。とりわけ,閉鎖GSのかなりの物件は,石油元売が所有するものであり,系列内で運営希望者がいなければ,解体・廃棄されてしまう。勿体無いことだ。元売が面子や縄張り意識を捨てて,もっとドライに割り切り,運営希望者の門戸を他社系列店にも広げたり,PBスタンドでも家賃さえ払ってもらえればどしどし貸すようにすれば,輝きを取り戻すGSが全国にはたくさんあると思う。私は,GS再生の処方箋として,ローコスト・セルフシステムを一貫して推奨しているが,諸般の事情でGSを売りたい方,貸したい方がおられれば,是非ご一報いただきたい。斜陽と呼ばれるこの業界にも,まだまだ“拾う神”が存在しているのだから。

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